1. 導入事例
2023.8.7

栽培履歴をスキャンしてOCR処理、農薬データベースと自動で照合
「fiシリーズ」と「DynaEye」を組み込んだ「栽培日誌管理システム」で農薬チェックの正確性と効率が向上

道の駅 芦北でこぽん 店長の宮本浩司さんと、道の駅 原鶴 ファームステーション バサロ 取締役部長・駅長の河津純治さんの写真

左:「道の駅 芦北でこぽん」店長の宮本浩司さん。
右:「道の駅 原鶴 ファームステーション バサロ」取締役部長・駅長の河津純治さん。

農作物を直売する道の駅では「食の安心・安全」を確保するという重責を果たすため、栽培履歴の確認、特に農薬のチェックに惜しみなく力を注いでいます。この重要な仕事を力強くサポートするのが、株式会社サニックス・ソフトウェア・デザイン(福岡県福岡市)が開発した「栽培日誌管理システム」です。専門性が高く一筋縄ではいかない農薬チェックも、当システムの導入によりスムーズになります。その特長について同社にお話をうかがうとともに、システムを導入している道の駅を訪ねて運用と効率化の詳細について取材しました。

道の駅 芦北でこぽん
道の駅 原鶴 ファームステーション バサロ

業種:流通/農業(農作物の直売)

課題
農作物の農薬チェックは「食の安心・安全」のために必須だが、時間と労力を要するため、農作物を直売する道の駅の悩みの種になっていた。
解決法
生産者が栽培履歴を記入したシートをスキャンしてOCRで読み取り、農薬データベースと自動で照合する「栽培日誌管理システム」を導入。
効果
農薬チェックの正確性と作業効率が向上した。また、シートを一般的なコピー用紙にプリントして使えるなどランニングコストが抑えられているため、同種の既存システムからのリプレースでは経営的メリットも生じた。

事例ご紹介動画(再生時間 6:00)

本動画は、記事の取材先とは異なる「道の駅 みやま」、「道の駅 むなかた」での取材をもとに作成しております。

1. 詳細な判定が可能な農薬チェックシステムをデータベースから開発

株式会社サニックス・ソフトウェア・デザイン(以下、SSD) ソリューション本部 営業部 シニアエキスパートの牧山博徳さんと、同じく開発技術部 開発2課 課長代理の小松紗知子さんにうかがいます。SSDと「栽培日誌管理システム」の概要からお聞かせください。

牧山さんSSDは、親会社で環境衛生管理や産業廃棄物処理などを手がける株式会社サニックス(福岡県福岡市)の情報システム部門が2003年に独立して設立された会社です。親会社の複雑な内部管理システムなどを構築してきた経験と技術力を活かして、現在はお客様のご意向に添い、人がシステムに合わせるのではなくシステムが人に合わせるソリューションを開発・提供しています。

小松さん「栽培日誌管理システム」は、農作物の栽培過程で農薬が正しく使われたかどうかを自動で判定するものです。当システムでは、農作物を直売する道の駅に対して、農作物を出荷する生産者が、「農薬をいつ、どのような希釈倍数と液量で散布したか」といった履歴を所定の管理シートに記入し、提出します。それをスキャナーでスキャンすると、システムが記入内容をOCRで読み取って農薬のデータベースと自動で照合し、合否を素早く判定します。同システムではスキャナーに「fiシリーズ」を公式採用しているほか、システム内に業務用AI-OCRソフトウェア「DynaEye」のSDK(ソフトウェア開発キット)を組み込んでいます。

株式会社サニックス・ソフトウェア・デザインの小松紗知子さんと牧山博徳さんの写真

株式会社サニックス・ソフトウェア・デザインの牧山博徳さん(右)と、同じく小松紗知子さん。福岡県福岡市の本社前にて。

fi-8170とパソコンの写真

「栽培日誌管理システム」では「fi-8170/fi-8150」を公式スキャナーとして採用しています。写真は同システムを導入している熊本県葦北郡芦北町の「道の駅 芦北でこぽん」事務所に置かれた「fi-8170」。1分間に70枚・140面を読み取れるA4高速スキャナーです。

何をきっかけにシステムを開発されたのでしょうか。

牧山さんJA(農業協同組合)が経営する「道の駅 芦北でこぽん」(以下、芦北でこぽん)様からのご依頼が開発のきっかけです。2020年の球磨川水害で被災された芦北でこぽん様は、被害からの復興を機に、農作物の栽培履歴をチェックするシステムを一新し、より使いやすいものにしたいというご希望をお持ちでした。

その背景には、生産者と販売者が一体になって「食の安心・安全」を確保していこうという行政レベルの大きな流れがあります。特に残留農薬などの事故を未然に防ぐための農薬チェックは重要視されており、多くの道の駅が力を入れて対応しています。

道の駅の野菜売り場の写真
野菜売り場のトウモロコシの写真

道の駅などの直売所は採れたての農作物が手に入るため人気が年々高まっています。それだけに「食の安心・安全」のための農薬チェックを欠かすことはできません。

水害以前、先方様は別のシステムを使用していたのでしょうか。

牧山さんそうです。この業界には以前から、農林水産省が大学に管理を委託している農薬データベースに基づいた半ば公共的なシステムが存在し、多くの道の駅に導入されています。ただ、この既存システムには比較的大きなランニングコストがかかるほか、使い方がやや難しいことから、芦北でこぽん様では使いやすいシステムの入手を急務としておられました。

しかしなにぶん水害からの復興の一環という事情があるため、できるだけ低コストのシステムにすることが絶対的な条件でした。その上で使い勝手を向上させ、業務効率化につなげなければなりません。その点が開発を進める上での工夫のしどころでした。

小松さんまた、芦北でこぽん様からは、生産者にはご高齢の方が多いため、紙の管理シートに書き込む以前からの方式は崩さないでほしいというリクエストをいただきました。シートのフォーマットが以前と大きく異なると生産者の方々が記入しにくくなるため、基本的に同様のレイアウトにする必要もありました。

芦北でこぽん用「栽培日誌管理システム」の管理シートの表面の写真
芦北でこぽん用「栽培日誌管理システム」の管理シートの裏面の写真

「栽培日誌管理システム」の管理シート(芦北でこぽん用)。写真が表面(2点とも)、写真が裏面(同)です。表面には肥料の履歴、裏面には農薬の履歴を記入します。

その管理シートに記入された内容をシステムで照合する際、照合先の農薬データベースは既存のものを使っているのでしょうか。

小松さん結論から言うと、新たなデータベースを当社で構築しました。当初は以前のシステムと同じ農林水産省のデータベースをマスターにすればよいと考えていましたが、商業利用には多少の制限がかかるほか、かなり多額の使用料が発生するため、結局は以前のシステム同様、コストを抑えたいという芦北でこぽん様のご要望に合わなくなることが判明しました。

そこでいろいろ調べたところ、農水省のWebページで農薬の検索ができ、農薬のデータを取得できることがわかったので、それを1件1件分析してデータベースを新たに作ることにしました。農薬データは10万件以上あったため、この作業には半年ほどの時間を要しました。

具体的にはどのような分析や編集をなさったのでしょう。

小松さん農薬データベースにおける情報の発生源はただ一つ、農薬を開発した製薬会社が農水省に登録を申請したときの記載内容です。ところが、申請フォーマットの問題かと思われますが、同じことを述べるのにも会社ごとに表現が違っていたり、平仮名と漢字が混在していたり、半角文字と全角文字が入り交じっていたりと、未統一のままデータベース化されています。これでは検索と照合が不十分になると考えられたため、まずはそのレベルから修正しました。

より高次の作業としては、記載内容そのものの確認が挙げられます。農薬には、同じ農作物でも時期によって希釈倍数や散布量が変化するといった複雑な決まりがあるため、データベースの記載内容をシステムでの検索に適するよう整える必要があります。確認しなければならないことが次から次へと出てきて、非常に大変な作業でした。製薬会社に問い合わせたことも一度や二度ではありません。

気が遠くなるような作業ですね。

小松さんそこまでしたのは、芦北でこぽん様が既存のシステムやデータベースよりも使い勝手のよいものを望んでおられたからです。たとえば、以前のシステムでは要確認の項目が見つかってアラートが出ても、どういう理由で何を確認すべきなのかがわからないといった問題があるようでした。その場合は道の駅のスタッフが農薬の適用書という分厚い書物をめくって、要確認の理由から探すことになります。ただ、農薬Aと農薬Bに同じ成分が入っているときに「合わせて何回まで」とする成分回数の規定などがアラートの原因だった場合、人力で探し出すにはかなりの労力が必要です。

そうしたことに費やす手間と人員を減らして効率化を実現するために、「栽培日誌管理システム」では一歩先に踏み込んで、要確認の理由までを示せるようにしようと思いました。データベースの整理に半年をかけた理由はそこにあります。

牧山さんその結果、お客様が「そこまで知らせてくれるのか」と驚くほど、詳細な分析を瞬時に出せるシステムが出来上がりました。芦北でこぽん様が以前お使いになっていたシステムや、それとは別にいくつか存在する同様の製品と比較しても、一歩抜きんでたものになったと思います。あるJAで実際に試してもらったところ、要確認の理由をアナログで調べるのに3時間を要したのに対して、「栽培日誌管理システム」の場合は理由付きで表示されるまでに4秒しかかかりませんでした。

「栽培日誌管理システム」画面でアラートが出ている写真
「栽培日誌管理システム」画面でアラートの詳細が出ている写真

「栽培日誌管理システム」画面より、アラートが出た場合のサンプル。写真の画面でOCR処理の確認と修正を行い、「農薬チェック」のボタンを押すと、「基準値より多く散布されています」などの理由(写真下の文字列)が示されます。

自社で新たに農薬データベースを構築するにあたっては、信頼性の担保という点で何か工夫をされたのでしょうか。

牧山さんデータベースをJAの営農指導部の方々に数回にわたって評価していただき、アドバイスを受けるという方法をとりました。営農指導部は、農薬をはじめとする農作物のトレーサビリティ全般に関して、我々民間のはるか上をいくノウハウと知識を持っています。その一端をお借りし、プロでなくとも扱えるようにしたのが「栽培日誌管理システム」です。

小松さんなおデータベースの更新は1年に2回、行っています。廃番になった農薬のデータをすぐに消してしまうと市中在庫に対応できなくなるので、この頻度が適切と考えています。ただし新しい農薬についての問い合わせがあれば、その都度登録を行います。

「栽培日誌管理システム」に「fiシリーズ」と「DynaEye」のSDK(ソフトウェア開発キット)を採用された経緯をお聞かせください。

小松さん管理シートの存在が直接のきっかけです。芦北でこぽん様の以前のシステムでは、管理シートにOCR専用の厚紙を用いており、増刷のたびに1枚何円というコストをかけて印刷所に発注していました。これが農薬データベースの使用料と並んでランニングコストを上げる要因になっていたので、当社のシステムでは管理シートをプリンターで普通紙に出力し、OCR専用機ではない汎用スキャナーで読み取る方式にしました。

スキャナーに関しては以前から「fiシリーズ」の読み取り精度が群を抜いて高いと聞いていたので、候補にしようと製品情報を調べるうち、業務用AI-OCRソフトウェア「DynaEye」の存在も知りました。この2つがあれば管理シートのコスト削減が可能ですから、当システムのスキャナーとして「fiシリーズ」を、またシステムに組み込むAI-OCRソフトウェアとして「DynaEye 10 帳票OCR SDK」を、それぞれ採用して開発を進めました。

牧山さんスキャナーは「fi-8150」「fi-8170」のいずれかをお客様に選択していただき、当社ですべての設定を済ませてから納入しています。

普通紙にプリントした管理シートの写真

普通紙にプリントした管理シート。フォーマットは顧客の要望に合わせてカスタマイズできます。

管理シートに手書きで記入された文字の様子

管理シートに手書きされた文字をOCRで読み取ります。

「DynaEye」を選ばれた際、何が決め手になりましたか。

小松さん当システムでは手書き文字を読み取るため、OCRの性能が非常に重要です。実は他社製OCRエンジンの説明会にも参加したのですが、手書き文字の認識精度は高かったものの、大企業向けの製品ということで価格も非常に高く、今回のお話にはまったくマッチしませんでした。一方、PFUのセミナーに出席して詳しい話を聞いたところ、「DynaEye」ならば読み取り性能とコストの両立が可能と考えられたので、導入を決めました。

手書き文字の認識精度については道の駅の現場でうかがいますが、開発者から見た感触はいかがでしょうか。

小松さんかなりよいと思います。読み取れない文字があっても簡単な修正で済みますので、実務上の問題は発生していないと認識しています。

システムへのSDK組み込みはスムーズに進みましたか。

牧山さんスムーズでした。わからないことがあっても、PFUに問い合わせると質問内容を理解して適切な部門から回答してくれるなど、サポート体制も優れていると思います。PFUのように、自社製品を出していながら開発協力にも対応するメーカーは、私の知るかぎりほとんどありません。技術的に細かいところまで相談できるのはありがたいことです。

小松さんの写真

「栽培日誌管理システム」の開発を主導した小松さんは、この仕事を通じて農薬にかなり詳しくなったそうです。

牧山さんの写真

JAなど公共的な顧客にコンサルティングを含めた提案を長年行ってきた牧山さん。顧客と開発部門をつなぐキーマンです。

「栽培日誌管理システム」の今後について展望をお聞かせください。

牧山さん当システムは2021年に芦北でこぽん様で初めて稼働し、翌22年には「道の駅 原鶴 ファームステーション バサロ」様に導入していただきました。その後、情報が広まるにつれて多くの引き合いをいただくようになり、JAの直売所4店舗に入っているほか、2023年6月・7月には3店舗に導入される予定です(2023年5月の取材時)。今後は九州だけでなく、沖縄・四国への展開も見据え、当システムによる業務支援を広げていきたいと考えています。

2. 誰でも扱え、低コスト・高効率。望んでいた通りのシステムが出来上がった
導入事例① 道の駅 芦北でこぽん(熊本県葦北郡芦北町)

道の駅 芦北でこぽん 店長の宮本浩司さんの写真

「道の駅 芦北でこぽん」店長の宮本浩司さん。特産品の「デコポン」とともに。

「栽培日誌管理システム」を導入している2か所の道の駅を訪ね、同システムと「fiシリーズ」が現場でどのような効率化を実現しているのかを取材しました。まず事例①として、システムの開発発注者でもある「道の駅 芦北でこぽん」の店長、宮本浩司さんにお話をお聞かせいただきます。

当店は2009年に熊本県で最初の大型直売所「JAあしきた ファーマーズマーケットでこぽん」としてスタートしました。2016年の熊本地震のあとに道の駅となり、現在は観光客のみならず地元の方にもスーパーマーケット感覚でご利用いただいています。建物も運営もJAによるもので、私自身、JAに所属する職員です。

当地の主たる農作物は果物です。特に柑橘類が盛んで、昔から甘夏が知られているほか、店名にしている「デコポン」も特産物です。当店への出荷者は2023年2月時点で341名、そのうち果物や野菜をコンスタントに出荷する生産者は100名前後です。

道の駅 芦北でこぽんの店内の様子

「道の駅 芦北でこぽん」の広く明るい店内。地元客がスーパー代わりにも利用できる品揃えです。

デコポン売り場の写真

取材時は盛りを過ぎていたものの、「デコポン」(品種名は不知火)はさすがの充実ぶり。

「栽培日誌システム」を導入した最大の理由は、「当店がJAだから」です。「食の安心・安全」が重要視される時代に、JAが農薬を間違えたらおかしいですよね。ですから販売する農作物が正しい農薬を正しく使って採れたものかどうか、確認を欠かすことはできません。

ところが、農薬のチェックは非常に複雑でやっかいな仕事です。JAの運営といってもここは道の駅ですから、営農指導の経験者は一人もいませんし、私自身のキャリアも金融や小売がメインです。その体制で、農薬の適用書をめくりながらチェックするのは正直、無理な話です。そこで必要なのが、事務所の誰もが扱え、農薬を確実にチェックできる仕組みです。SSDの牧山さんに開発をお願いしたのは、まさにそういうシステムでした。

生産者がスキャナーでスキャンする様子

事務所の一角に置かれたスキャナーで生産者自らスキャンします。

fi-8170とパソコンの写真

機種は「fi-8170」です。一度に両面を読み取ることができ、スキャンは瞬時に終わります。

現在の運用としては、まず生産者の方々に、ご自身で日々つけておられる栽培日誌をご確認いただき、管理シートに必要事項を記入して、出荷の1週間前に事務所まで持ってきていただきます。そして、事務所のスキャナーにシートを差し込んで、ボタンを押してスキャンしてください、原本はうちが保管するのでそのままにし、スキャン後にプリンターから自動で出てくるコピーを持ち帰ってくださいとお願いしています。とはいえご高齢の方が多いので、たいていは事務所の者が呼び出されることになります。スキャンの総数は年間で1,400枚弱といったところです。みかんの時期には特に集中します。

OCRに関しては、すべての生産者が読みやすい字を書いてくれるわけではないので、100パーセントの精度は最初から期待していません。必ず何らかの修正は入ります。ただ、面倒な修正までは発生しません。なお、筆記具は書き損じたときに消して修正できる鉛筆を推奨しています。しかしもちろん、ボールペンでグシャグシャと消してくる方もいます(笑)。

紙の管理シートとパソコンに表示された読み取り結果を見比べる様子
パソコン上の修正画面の写真

読み取り結果を原本と見比べ()、必要があれば画面上で修正します()。なお本来はデータ改竄防止のため、スキャン後の作業はすべて別の専用PCで行います。

修正後に農薬チェックボタンを押すと、システムが自動で合否を判定してくれます。もし不合格になったら、記入内容が正しいかどうか生産者に電話して確認します。書いた通りで不合格なら「農薬を間違えていますね。残念ですが出荷できません」という話になります。その農作物が他店に出て何かあったら大変ですから、ここで止めなければなりません。

不合格は年間で20件程度、発生しますね。トマトとミニトマトでも使う農薬が違いますから、ベテランの方でも間違えることは現実にあります。逆に、適合しているのでオーケーですという結果が出れば、出荷していいですよということになります。

管理シートの原本を入れるトレーの写真

原本控えを入れるトレーには「不合格」の文字も見えます。ベテランの生産者にもミスはあります。

サラダ玉ねぎの写真

少しのミスも見落とすことなくチェックすることで、売場の安心が保たれます。写真は当地で人気の野菜、サラダ玉ねぎ。

当店では以前、別のシステムを入れていましたが、「栽培日誌管理システム」にしてから管理シートの印刷コストが大幅に減少したので助かっています。それと、以前のシステムでは照合結果がずらりと長く表示されて読み取りにくく、不合格のときは判定理由が不明瞭だったので、生産者に確認する前に結局は自分で適用書をめくるということもよくありました。その点、今のシステムは全然違いますよ。ボタンを押せばものの5秒で不合格の理由まで全部出てきますから。

スキャナーの「fi-8170」も重宝しています。コンパクトなので狭い事務所でも置き場所に困りません。システムを新しくして、このスキャナーが入ったときには、ほっとしましたよね。

「栽培日誌管理システム」があると、スタッフの経験や教育という意味での人件費も大きく削減されます。全部機械がやってくれますから。使い方さえ覚えればパートタイマーの方でもできます。当店として一番望ましい形になったと思っています。

道の駅 芦北でこぽんの外観

道の駅 芦北でこぽん(JAあしきた ファーマーズマーケットでこぽん)
熊本県葦北郡芦北町佐敷443
https://www.ja-ashikita.or.jp/dekopon/

3. ランニングコストが4分の1になり、農薬チェックに要する時間も大きく削減された
導入事例② 道の駅 原鶴 ファームステーション バサロ(福岡県朝倉市)

道の駅 原鶴 ファームステーション バサロ 取締役部長・駅長の河津純治さんの写真

「道の駅 原鶴 ファームステーション バサロ」取締役部長・駅長の河津純治さん。大きく実ったトマトを手に。

事例②では「道の駅 原鶴 ファームステーション バサロ」を訪ねます。同店では2022年に「栽培日誌管理システム」と「fiシリーズ」を、「芦北でこぽん」と同じ既存システムをリプレースする形で導入しました。取締役部長・駅長の河津純治さんにお話をうかがいます。

当店は1996年にオープンした、福岡県で最初の道の駅です。施設の建設は自治体、運営は第三セクターの株式会社ガマダスです。直売所としても早くからスタートした当店は、新鮮さと高品質を当初から目指してきました。その点、開店当初に比べて、現在は農作物の品質が総じて高くなっています。生産者が消費者のニーズに応えようと意識を変え、努力を重ねた結果です。

当地はフルーツの里といわれており、富有柿の産地です。野菜も並べていますがメインはフルーツで、特に11月になると柿の売上が非常に大きくなります。お客様は主に周辺地域の方で、多くがリピートしてくださっています。当店に農作物を出荷する生産者は450名というところです。

道の駅 原鶴 ファームステーション バサロの店内の様子

「道の駅 原鶴 ファームステーション バサロ」店内。商品の回転が速く、新しい農作物がどんどん陳列されます。

トマト売り場の写真

形が不揃いでも味のよい野菜などを手に入れられるのが直売所の魅力です。

「栽培日誌管理システム」は「食の安心・安全」を実現するためのツールとして導入しました。我々従業員の力だけでは農薬の万全なチェックが不可能ですので、機械の力、システムの力を借りて安心・安全を担保するのが目的です。

生産者の方々には、当方でプリントした管理シートにご自身の栽培日誌を書き写していただき、出荷希望日の1週間前までに事務所でスキャンしていただきます。その際、原本は所定の場所に置き、代わりに控えを持ち帰ってもらいます。スキャンしに来られる方の数は時期によって異なりますが、ほぼ毎日誰かが使っていますね。農作物は種類ごとに出荷時期が重なるので、大勢来て2~3人待ちになることもあります。

事務所内に置かれているスキャナーの様子

生産者にわかりやすいよう、事務所に入ってすぐのところにスキャナーが置かれています。

スキャン用スペースの写真

こちらがスキャン用スペース。機種は「fi-8170」です。下のプリンターは控え出力用です。

システムによる照合作業は、基本的にシートがスキャンされたら随時行います。もし要確認となれば必ず生産者に連絡して確認し、記入ミスであれば訂正しますが、書いた通りで不合格なら出荷は不可です。そこは厳しく対応しなければなりません。一方、合格したらシステムが自動で生産者の方にメールを送り、出荷が可能な旨をお知らせする設定にしています。

記入時の筆記用具は特に指定していません。ボールペンでも鉛筆でも読み取りは可能です。ただ、認識精度を高めるために文字は見本通りに書いてくださいとは、一応お願いしています。なかなかそうはなりませんが(笑)。

生産者が管理シートをスキャンする様子

生産者が管理シートを自らスキャンします。高齢の生産者にもわかりやすいよう、タッチパネル式ディスプレイに表示されたスキャンボタンに触れるだけでスキャンできる設定にしています。

スタッフがパソコンでOCRの結果を確認する様子

管理シートがスキャンされるとスタッフが事務所奥のPCでOCR処理結果を確認・修正し、農薬チェックボタンを押してデータベースと照合します。

当店では10年以上前から使っていた別のシステムを「栽培日誌管理システム」にリプレースしました。最大の理由はランニングコストです。「食の安心・安全」を担保するためとはいえ、コストが大きすぎると使い続けることができません。企業であるからには経費削減の努力が必要です。「栽培日誌管理システム」に入れ替えた結果、コストは以前の約4分の1にまで下がりました。もちろんリプレース自体にはそれなりの初期費用がかかりますが、ランニングコストを考えれば十分に元が取れます。

コスト以外の利点もあります。アラートが出たときの理由が明確なので状況把握にかかる時間が以前よりも短くなったことに加え、たとえば農薬を規定よりも薄めていて、チェック上はセーフだけれど効用の点でどうなのかといったこともわかるようになったので、生産者への注意喚起などもできるようになりました。

道の駅 原鶴 ファームステーション バサロの買い物かごに野菜が入っている写真

農薬チェックによって、残留農薬の心配をすることなく新鮮な農作物を購入し、安心して食べることができます。

道の駅 原鶴 ファームステーション バサロに置かれている表彰状の写真

大規模直売所の先駆けの一つである「道の駅 原鶴 ファームステーション バサロ」は全国的にも知られています。

OCRに関しては、以前のシステムに比べて読み取り後の手直しがずいぶん減ったように思います。読み取り精度が高いのでしょう。

こうした効率化を総合的に見ると、農薬チェックに要する時間は相当削減されていると考えられます。それだけを抜き出して計算したことがないので数字では表せませんが、体感的に明らかに短くなっており、「だいぶ楽になった」という実感があります。

今はどこのお店でも「食の安心・安全」やトレーサビリティの確保を声高に謳う時期は終わり、消費者も「そんなことは当たり前」と見るようになっています。そうした時代だからこそ、システムに任せられるところは任せながら、より正確なチェックを重ねていくことが求められていると思います。

道の駅 原鶴 ファームステーション バサロの外観

道の駅 原鶴 ファームステーション バサロ
福岡県朝倉市杷木久喜宮1665-1
http://fs-basaro.jp/

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