「ハンコ・紙」やめませんか?~③記録管理の重要性とスキャナ保存~

取引先の事情がさまざまであることから、取引は書面の場合もあれば電子データの場合もあります。もし電子ワークフローを導入したら、書面も電子データも記録管理システムで一元的に管理したいですよね。
「電帳法スキャナ保存」を活用して書面の取引エビデンスを電子化し、すべて同じワークフロー上で運用することで、記録管理システムで一元管理することができます。

本連載では「ハンコ文化」で困っているみなさんの疑問にお答えし、脱ハンコのはじめ方からスキャナーを使った取引書類の電子化まで全3回にわたり徹底解説します。第1回、第2回では、取引に必要な要件と社内の決裁業務のワークフローを電子化する方法を説明しました。最終回の第3回では、さまざまな方法で受領した取引エビデンスを、どのように管理したらいいかを説明します。

第1回 「ハンコ・紙」やめませんか? ~①契約自由と電子取引~
第2回 「ハンコ・紙」やめませんか? ~②社内決裁業務の電子化~
第3回 「ハンコ・紙」やめませんか? ~③記録管理の重要性とスキャナ保存~

取引エビデンスの一元管理の方法は?
―求められる記録管理―

取引には、書面でのやりとりのほかにも、電子メールやFAXの送受信など、さまざまな方法があります。
これらの取引の内容をすべて、取引エビデンスとして保存し、自社で管理する記録管理システムで一元管理することが現実的な記録管理と考えます。
そのために、まずは取引先から受け取った取引情報を業務システム(電子ワークフロー)に入力するところからはじめます。
詳しい電子ワークフローを次に説明します。

取引情報を記録管理システムに集約する

取引先A、B、Cとそれぞれ異なる契約方法で取引を行っている会社を例に、取引エビデンスを一元管理する場合の電子ワークフローを見ていきます。

図1.取引エビデンスの一元管理

それぞれの取引先とは、以下のような方法を使用して取引しています。
取引先A:取引先Aが利用契約を結んでいる電子契約プロバイダを介して取引
取引先B:電子メールで取引
取引先C(電子取引を希望しない下請事業者):書面で取引

  1. 業務システムへの取引情報の入力

    取引先から書面または電子データで送られてきた取引エビデンスを、業務システムに入力します。取引先別の入力方法は以下のとおりです。
    取引先A:電子契約情報を電子契約プロバイダからダウンロードし、業務システムに入力
    取引先B:電子メールの取引情報を、業務システムに入力
    取引先C:書面を受領した事業所でスキャンし、業務システムに入力

  2. 電子ワークフロー上での確認/承認

    業務システムに入力された取引情報を、電子ワークフロー上で確認/承認します。

  3. 取引エビデンスの保存

    税法では、すべての取引を帳簿に記載することと、すべての取引エビデンスを保存することが定められているため、取引先A、B、Cとの取引情報を、以下の流れですべて保存します。
    ① 会計システムに連携し帳簿に記載する
    ② 取引エビデンスは、帳簿との関連性を確保するため、業務システムで採番される伝票番号とともに記録管理システムに保存する

このように、取引方法はさまざまであっても、すべての取引情報を業務システムに入力し、自社で管理する記録管理システムに保存することで一元管理することができます。その際は、電子契約プロバイダを介して締結した電子契約情報や、電子メールの情報、スキャンデータなどのすべての取引エビデンスを、完全性を確保した記録管理システムで保存/管理することが重要です。

書面の取引エビデンスをスキャンしよう
―電帳法スキャナ保存の活用―

これまで、電子ワークフローを導入することで、業務の効率化、スピードアップにつながると説明してきました。
電子ワークフローを導入するからには、すべての取引を効率的な電子取引に移行したいですよね。
しかし、下請法に定められる事業者との取引の場合、電子取引を行うには下請事業者の承諾が必要です。ほかにも、BtoC取引を行う場合や、請求書だけが紙で発行される場合などは、書面による取引になることがあります。

取引エビデンスを書面で受領すると、その書面を電子ワークフローとは別に回送し、確認する必要があるため、大きなボトルネックとなってしまいます。そこで、このボトルネックを解消するために、電帳法スキャナ保存(e-文書法)を活用します。

電帳法スキャナ保存(e-文書法)でボトルネックを解消

税法では、受領した取引エビデンスを、納税地に7年間保存することが義務付けられています。
書面の場合は、原則、その書面の原本を保存する義務がありますが、特例として電帳法スキャナ保存の申請/承認を得ることで、スキャンした電子データでの保存が容認されます。この手順を踏めば、書面の取引エビデンスを電子化することができ、原本の廃棄も可能になります。
書面の取引エビデンスを電子化して、電子ワークフロー上で運用することで、回送業務をなくし、業務のボトルネックを解消しましょう。

なお、電帳法スキャナ保存は、法人税法で青色申告法人に保存が定められている書面の原本を廃棄することを容認しているため、電子化には非常に多くの要件が定められています。万が一不備があると、青色申告法人の義務違反となってしまうため、それらの要件を確実に満足するように規程(ルール)、運用管理、ITシステムを整備・構築・運用することが重要です。

安心して電子化を行うために―記録管理のポイント―

高度な情報社会となった現代で、記録管理を確実に行うには、規程(ルール)を頂点に、運用管理、ITシステムの階層からなる三角形を構築することが重要です。

図2.取引エビデンスに必要な記録管理とPFUの提供するサービス

規程
:社内規程で税法、電帳法要件など記録管理に要求される事項・プロセス・体制を定める
運用管理
:記録管理のプロセスの維持評価改善活動(PDCAなど)の運用管理を整備する
ITシステム
:記録管理のプロセスを実行するためのITシステム(完全性を持った記録管理システムの導入など)を構成する

自社のルールに従って業務プロセスを定め、電子または紙のエビデンスの受領から、保存/廃棄までを管理することで、説明責任を果たすことができます。
逆に言えば、ルールが定まっていないと業務プロセスを説明できないため、説明責任を果たせません。しっかりと自社でルールを定めて管理を行い、民事訴訟、内部統制、税務調査といったあらゆる局面に対応できるようにしましょう。

効率的な働き方をめざして

電子化への移行は決して無理難題ではなく、準備を行えば十分に実現できます。
取引情報や決裁エビデンスの一元管理を行うときに大切なことは、法令要件を満足することと、説明責任を果たすことです。そして、これらを適切に実現するためには、記録管理の知識が必要不可欠です。記録管理の知識があれば、確実に電子化を行うことができます。
PFUは記録管理のプロフェッショナルとして、記録管理システムをはじめとする各種システムのご提案、構築、導入を通して、お客様の業務のデジタル化を支援いたします。この機会に、取引や決裁業務の電子化を検討してみてはいかがでしょうか?

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