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人・コミュニケーション

サプライチェーンの危機と闘う最前線
~台風の次は新型コロナ!?みんなでピンチを切り抜けろ!~

昨年末から拡大を続ける新型コロナウイルス感染症(以降、新型コロナ)は、私たちの日常生活にも多大な影響をおよぼしている。多くの国で人やモノの移動が制限されることで、日本の製造業は大きな打撃をこうむることとなった。新型コロナが世界中に広がる現在、生産工場の操業停止や物流の停滞などにより部品や材料の調達が困難となり、生産を停止する工場さえも出ているのだ。

しかし、このサプライチェーン危機のなかでも、PFUの工場は休むことなく生産を続け、お客様に製品を届け続けている。実は、昨年の台風19号(令和元年東日本台風)による災害時にも、PFUは部品枯渇、生産停止の危機を経験していた。困難な状況にあってもそれをばねに進化しようとする、その闘いの様子を紹介したい。

台風19号襲来!基板が入荷ストップ

2019年10月12日、日本列島を巨大な台風が襲った。東日本を中心に観測史上1位となる記録的な大雨をもたらし、各地で河川の氾濫、土砂崩れなどが発生した。福島県では、阿武隈川が氾濫し、流域の多くが浸水。この中に、PFUの製品に使われるプリント基板の基材を生産する工場があった。

プリント基板はコンピューターを支える要であり、多くの電子部品をつなぎ、かつ制御するためには不可欠な部品だ。基材と呼ばれる紙やガラス布などの素材に樹脂などをしみこませ、その上に電気が流れる金属などの配線をプリントして作られる。つまり、基材がなければ、プリント基板は作れない。被災した工場の基材を使うプリント基板の入荷はストップし、そのプリント基板を必要とするPFU製品の生産さえも危ぶまれる状況となった。

事態を深刻に受け止めたPFUは、即座にBCP(Business Continuity Plan;事業継続計画)指令を発令した。

部門を超えた毎日の朝会!一気通貫の決断

この状況に対処するため、購買、生産管理、品証、製品開発、製造技術、営業など、関係する部門の役員から担当者に至るまですべて集めた朝会を毎日実施し、部門を超えて対応にあたることを決めた。
BCP朝会は情報共有からはじまった。影響範囲が見えてくるにつれ関係者は騒然となる。代替えの基材を使用する場合、設計変更が必要な可能性がある。影響のある製品は膨大で、設計変更と評価だけでも、数年かかる。これまでのやり方では到底間に合わない。
対応に伴い、関係者全体に「絶対にサプライチェーンを切らさない」、「お客様の必要な時に必要なものを届ける」という一体感ができていく。決断も早い。各部門から上がった情報や対応案に役員がその場で判断を下す。判断は迅速、かつ、他の部門にも即座に共有された。まさに一気通貫の決断だ。

部品を枯渇させない~購買統括部 下村さんの奮闘

購買統括部の下村(しもむら)さん含め購買担当者は、毎日200を超える部品メーカーとやり取りし、必要な部品を生産に間に合うように手配するため、スケジュール管理を行っていた。

「130部品(図番)×代替えの基材の種類×メーカーで、約300図番の管理が必要でした。それを1件1件、設計変更が必要かどうかの判断、部品が枯渇しそうなものの優先順位付け、さらに生産スケジュールと部品メーカーのスケジュールをあわせこんで、スケジュールを調整していました。部品を枯渇させないために、1つの図番に対して、代替えとなる基材の候補を3つくらいあげて、状況に合わせて選択するものを変える必要がありました。例えば、材料Aに期待していたけれど入手できないからBにしないと、となったり、お客様から『BじゃなくてCにして』と言われたり、中国の材料は需要が集中してしまって入手できなかったり。部品もメーカーも複数から仕入れることで、なんとか対応しました」

設計者への情報の橋渡し役 ~インダストリープロダクト事業部 釋迦院さんの奮闘

代替えの基材でも設計の変更が不要なものもあった。しかし、どうしても設計変更が必要なものも多数発生した。入手する部品と実際の設計部門との橋渡しになったのが、インダストリープロダクト事業部の釋迦院(しゃかいん)さんだ。

「部品の管理表とは別に、部品の枯渇が早くて設計変更が必要なものの優先順位表を作っていました。毎日状況が変わっていく中で、実際に設計にあたる人たちに、膨大なリストを見ながら優先順位を判断して作業する余裕はありません。そこで、部品の管理表から設計の優先順位付けの更新をして、対応をお願いしていました」

数えきれない現場の努力により、台風19号の影響を最小限に!

各部門でそれぞれの担当者が行ってきた努力はこれだけではない。ここではとても書ききれないが、例えば、設計図面のバージョンアップルールの変更や、部品のグルーピングによる短時間での評価、お客様への密な情報共有と丁寧な説明、代替えの基材のトレース(どの部品がどの製品に使われたかわかるようにする)など。それぞれの現場でそれぞれが「今できること」を考え、BCP朝会ではそれらがスムーズに実行できるように決断を行い、全員が動きやすくなる仕組みを作っていった。結果として、PFUは台風19号の影響を最小限に抑え、無事にお客様に製品を届けることができたのであった。

しかし、台風19号の影響が終息しつつあった2020年1月、さらなる試練がPFUを襲う。新型コロナの発生と、その後の世界的拡大だ。

新型コロナ発生!世界的部品供給の危機

中国武漢市で発生した新型コロナは、予想を超え急速に世界中に広がった。欧米やアジアなど、多数の国で外出や移動の制限が実施された影響を受け、自動車メーカーや電機メーカーでは一部の海外の工場の操業を停止させた。さらに、中国や東南アジアで生産される部品の遅れや不足により、国内の工場でも生産が不安定になっているところもある。

PFUでも中国やフィリピン、マレーシアなどで生産されていた部品の調達が困難になっている。そのため、台風19号の時に実施したBCPを新型コロナ対応へと拡大し、様々な対応をしながら生産を継続している。

新型コロナの対応は「終わりが見えない苦しさがある」

台風19号の際には時間と共に被災した工場も復旧したが、新型コロナは発生から影響が拡大し続けている。中国、フィリピン、マレーシアへの感染拡大とともに、PFU製品へ影響する部品も増加し、対応は徐々に難しくなっている。いつまでこの状況が続くのかという「終わりの見えない苦しさ」に苛まれながらも、日々対応を続けている。

BCP朝会は、感染拡大防止のため、オンライン会議に形を変えた。直接顔を合わせることはできないが、コミュニケーションはスムーズだ。台風19号の対応でできた絆――率直に意見を言える雰囲気や部門を超えてひとつのことに取り組む関係――が今も生きているからだ。
調達先の状況は不安定だ。納入などの期日が守られないこともしばしば発生する。そのため、部品のサプライヤーとは毎日オンライン会議で連絡を取り合って状況を確認している。さらに、船や飛行機の発着も不安定なことから、物流の状況もあわせ日々情報を集めている。
また、影響する部品が多岐にわたることから、それぞれの代替えの部品をひとつずつ人の手で確認するのは至難の業となっていた。そこで、代替えや上位互換の部品を影響する部品と紐づけ、データベースから一括して抽出する機能を作成することで、影響調査の効率化をはかった。さらに、各国の動静変化に合わせて柔軟な調達対応が行えるよう、従来のデータベースにはなかった生産国情報を加える取り組みも行っている。

PFUの工場では、現在、従業員の命と健康を守りながら稼働を続けている。時間帯を分けて出社したり、行き来が自由だったフロアを完全に分離して、密集をさけるようにしたり、開発部門では社員のほとんどを在宅勤務にしたりとその取り組みは様々だ。これも、「サプライチェーンを切らさない」、「お客様の必要な時に必要なものを届ける」ための取り組みの一部に他ならない。

これからも闘いは続く…

サプライチェーンが途絶する要因となるのは感染症だけではない。台風19号のように、地震、水害など、日本は自然災害のリスクも高い。今後起こりえる不測の事態に備えていくには、何が必要なのだろうか。

PFUの調達を取り仕切る、購買統括部の松岡統括部長は次のように語った。

「今回、調達面でシングルソース、すなわち代替えのない材料、部品、メーカーがあらわになりました。今後、 新たに発生する部品調達リスクへの備えを考えると、採用する部品は材料も含めて「マルチ化」、すなわち何か起こったときにでも代替えできるよう想定しておくことが必要です。お客様製品のサプライチェーンを切らさないよう、部品の材料や生産国まで把握し、安定した部品調達ルートの確保に向けて、サプライヤーの皆さんと取り組んでいくつもりです」

ピンチをチャンスに!

現在も大変な状況であるにも関わらず、彼らは実に前向きだ。

「今まで『やらなきゃね』、と思っていた改善や提案を、優先度を上げて実施できました。調達のマルチ化は、ずっと考えていたことです。今回は、ある意味夢がかなった状況です」
購買統括部の下村さんはそう言って朗らかに笑ってくれた。

厳しい状況で対応にあたった当初は、お客様から「ベンダーを変えるな」などの厳しい声もあった。しかし、全ての製品を届けることができたことで、最後には「ありがとうございます」「頼もしい」という声をいただき、信頼を深めるまでに至った。
台風19号や新型コロナの対応は、緊急時の一時的なものだけではない。調達のマルチ化、基板のトレース情報管理、部品と生産国との関連付けなどは、これからも続けられていく。なにより、共に危機を乗り越えたお客様やサプライヤーとの信頼関係は貴重な財産だ。
つらく、苦しいピンチの時であっても、それをばねに、チャンスに変えて前に進む。それは今日も最前線の現場で「今できること」をする、彼らの底力に他ならない。

今できることをやろう。それが私たちの未来をつくるのだ!

PFUは、サプライチェーンの危機に対し、「サプライチェーンを切らさない」、「お客様の必要な時に必要なものを届ける」という決意を共有し、PFUを含む多くのサプライヤーがひとつになって努力することで、生産・供給を続けている。
日本は、これまでも東日本大震災をはじめ、台風、水害など、多くの自然災害を経験してきた。また、バブル崩壊やリーマンショックなど、経済的ダメージも負ってきた。しかし、そのあとには必ず以前より強くなって立ち上がってきた。災害や感染症といった、予測できない事態はこれからも起こりえる。しかし、かつてできたことが今の私たちにできないはずはない。
製造業にとっても、PFUにとっても、まだまだピンチの日々は続くのかもしれない。それでも、明けぬ夜はない。だから、今、私たちにできることを考えよう。今、私たちにできることをしよう。今日も、明日も、明後日も。私たちの未来は続くのだから。