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コーポレート

未来へ一歩踏み出す、地域産業×IoT
~IoT実践研修会で地域の中小企業をサポート~

家電や自動車、農機具、インフラ設備、果てはロケットまで。無二の技術からキラリと光るモノを生み出したのが、実は地場の産業を支える中小企業だった、なんていうことは、意外とよくあることだ。
石川県はニッチトップといわれる、隙間産業でシェアトップの企業がたくさんあり、その技術力の高さを誇っている。しかし、少子高齢化による生産年齢人口の減少や求人難による人手不足、生産性の伸び悩みなど、課題もある。

そうした現状を打開する手立てのひとつとして、IoTの活用を進めようという動きがある。しかし、中小企業にとってIoT化のハードルは高い。IoTに関する技術を持った人材は、すぐには得られない。そのうえ、他社の事例を集めようにも、中小企業の例は少なく、大企業や大工場での例は規模が違いすぎて参考になりにくい。

そのような状況から一歩踏み出すべく実施されたのが、一般社団法人石川県鉄工機電協会の青年部会が主催し、PFUが協力した「IoT実践研修会」である。手探りのなか、共に手を携えて解決に取り組もうとする経営者たちとPFU社員の姿がそこにあった。

IoTを実感できる研修会

小雪舞う、2月。「IoT実践研修会」の会場には、地域の産業を支える若き経営者や次期経営者たちが集まっていた。

IoT実践研修会は、初心者向け小型マイコンIchigoJam®(イチゴジャム)(※1)と Wi-Fi通信ボード、および センサーを利用して、IoTを体験してもらう研修会である。PFU(CSR推進部)は、これまで子供向けに多数のプログラミング教室を開催してきた。最近では、子供向けのみならず、大人向けにも複数回プログラミング教室を開催しており、特に地域の課題解決に協力してきた経験も買われ、今回、研修会の実施にあたることとなった。

実は、IoT実践研修会はこれが2回目の開催となる。初回では、LEDを光らせるなどの基本的な内容を行ったが、2回目となる今回は、いよいよ実践的な内容だ。近接センサーと温度センサーを組み合わせてデータを取得し、そのデータをサーバーに送信。スマートフォンでデータを見られるようにするというものだ。工場で部品などの物体が近づいたときに温度を測定して、遠隔でそのデータを見る、という状況を想定した。

話だけを聞くと難しそうだが、受講者たちは特に迷うこともなく順調に作業を行っているようだ。研修が進むにつれ熱心な質問の声があがり、技術を身につけようと真剣な様子が伝わってくる。
その後、大きなトラブルもなく受講者全員がセンサーで取得したデータをサーバーに送信。最終的には、サーバーに送信したデータを、自分のスマートフォンで見られるようになっていた。

研修会後の質問では、「自社ではシーケンサーを使用している。シーケンサーから情報を取れないか」、「サーバーの環境は、他の種類のものでも動作するか」など、実務ですぐにでもIoTを活用したい、という想いが感じられる質問が次々に飛び出した。また、一方で「データをサーバーに送らずにもっと簡単に扱いたい」など、現場視点の意見もいただいた。

「簡単にIoTが作れるということを体験してほしい」

講師を務めたPFUの久保田は、IoTを実際に試してみてほしい、と話す。

「第2回となる今回の研修では、これだけ簡単にIoTが作れるんだ、ということを体験してほしい、という思いを込めました。ただ、やはり会社ごとに状況は異なりますから"うちの会社の場合はこうしたい"という部分をくみ取らないと、受講者の課題解決につながるような内容にするのは難しいなと感じています。今後、例えば、今回の研修会でやった内容をベースに、いくつかの企業様でIoTを実際に試していただいて、その事例を共有する場があると良いのではないかと考えています。そうすれば、他の企業様にとってもIoTにどんな効果があるのかをイメージしやすくなり、IoTに興味をもってもらったり、導入に向けたハードルを下げたりできるのではないかと思っています」

自分たちに本当に必要なIoTを探る

研修会後、今後の方針を検討するため、意見交換の場が設けられた。研修会に参加された鉄工機電協会青年部会から、石川可鍛製鉄(株) 代表取締役社長 塩谷栄治様、(株)白山機工 専務取締役 穐田健次様、(株)旭ウエルテック 代表取締役社長 山田裕樹様にご参加いただき、企画の経緯や要望をうかがった。

IoT導入のハードルを下げたい

石川可鍛製鉄(株)の塩谷様は、この研修会開催のきっかけを次のように語った。

「数年前から製造業の間でも『IoT』ということが常に言われています。その中で、我々中小企業が、実際にIoTをやろうとしたとき、やはりハードルの高さを感じていました。それならば、一度、IoTがどんなものかというのを体験してみることができないか、という話をしていたんです。そのときに、PFUさんが小学生向けにIchigoJamを使ったプログラミング教室をやっているというのを聞いて、じゃあ大人だけどやってみよう、ということで、前回1回目をやっていただきました。それが非常に内容がわかりやすくてよかったので、次はステップアップできる中級編のようなものをやってもらえませんか、とお願いして、今回の2回目が実現しました。ただ、ステップアップしていく中で、各社のやりたいことが異なってくるので、今日のように"うちの会社では…"という意見も出てくるだろうな、とは思っていました」

研修会を通じて、実際にやれること、やりたいことが見えてきたからこそ、本当に自社でできるのか、どうすればできるのか、という、より具体的な意見が出てくることになったようだ。こうした現場の意見こそが、本当に役立つIoTにつながっていく。しかし、そこにもある程度の知識は必要だ。

今日習ったことが、IoTのアイデアにつながるかもしれない

現場にいる多くの人は、今やっていることが当たり前だと感じていると、(株)白山機工の穐田様は語る。

「まず、IoTでこんなことがやりたいんだけど、というのが出てこない。今やっていることが普通だから。例えば、今日習ったことがあれば、こんなことに使えるんじゃないか、ということが考えられるかもしれないけれど、そういうのがない状態では、こんなことがやりたい、というのは現場から出てこない。今回は温度を測りましたけど、こういうことができますという例をたくさん説明してもらえれば、それを組み合わせて、こんな形にしたいな、というアイデアが出てくると思います。そこから必要に応じてシステム会社に依頼する、という風にやれればいいなと思います」

まずやってみることで、進める

(株)旭ウエルテックの山田様はご自身で自社のIoTも担当されていることから、まずやってみることで次に進めるのではないかと話す。

「私たちのような小さな会社が自社向けにIoTをやろうとしたときに、すでに世の中にあるような製品開発向けのIoTを見ても、まだそこまでのものはいらないかな、と感じることが多い。だからまず自社用に、簡単にできることをぱっとやってみることができれば、そこから先を専門のシステム会社に依頼するのか、自社で人材育成するのか、各社で判断してもらうことができるようになります。だけど、経営者を含めて、ある程度IoTがわかっていないと、システム会社に依頼しても目的のものができなかったということにもなりかねません。だから、今回、IoTの勉強をスタートさせたことで、形が歪(いびつ)なものでも、とにかくボードがあって、センサーで温度が取れてとかができれば、IoTを少しでも理解して、ひとつ話が進められるかな、と思っています」

共に語る、IoTの未来の形

研修会の今後の方針を検討すべく始まった意見交換の場は、各社のIoTの状況や、製造業におけるIT人材獲得の難しさ、教育のありかたなど、どんどんと話題が広がっていった。さらには、「日報を手書きではなく音声入力にしたい」、「電流値を取得して機器の稼働を調べられたら」、「システム担当を育成するにはどれくらいかかるか」など、具体的な希望や質問も次々と出てきた。ときには、講師の久保田、開催をサポートしたPFUのメンバーまでが議論に参加していく様子は、目的は違えども志を同じくしているように感じられた。

今後の事業や業界の発展を願う経営者たちと、彼らをできうる限り支え協力しようとするPFUとの、立場や環境が違うからこその連携の形がそこにはあった。

小さく始めるIoTで、確かな一歩を踏み出す

研修会後の意見交換は予定時間を過ぎてもなかなか終わらず、議論は尽きなかった。それぞれが想いを意見として発し、議論が生まれ、さらに新しい意見が生まれ、研ぎ澄まされていく。その様子は、本当に必要なIoTに向けた確かな一歩を感じるものだった。それには、その手に届く、実現可能な技術を得たことが一つの起点となったことは想像に難くない。

手の届くところから小さく始めるIoTは、理想の姿を目指すにはわずかな一歩かもしれない。しかし、足を踏み出した一人ひとりにとっては、着実に前に進む一歩だ。その足元の道には、彼ら自身が体験、獲得したプログラミングやIoTの知識や技術がしっかりと敷かれている。

そしてPFUとしても、その道が地域の産業を支える人たちと共に歩む道であると願っている。

  • ※1IchigoJamはjig.jpの登録商標です。