• Facebookでこの記事をシェアする

コーポレート

楽しくなければプログラミングじゃない!
~「デジタル情報時代を担う子どもの育成」にPFUが協力~

幼い頃からデジタル機器があることが当たり前の時代に生まれた子どもたち。しかし、その仕組みを理解し、自身でプログラミングできるようになるには教育の力が必要だ。

子どもたちが楽しみながらプログラミングを学べる機会として、金沢市が企画した小学生ロボコン「加能ガニロボットコンテスト」。その開催には、まず子どもたちにプログラミングを学んでもらう必要があった。開催に向けて小学生にロボットプログラミングのはじめの一歩を教え、コンテスト当日までメンターとしてサポートしてきたのが、PFU社員である。

PFUでは石川県内の小学校を中心に、昨年だけで250回を超える出張授業を開催してきた。学校の先生ではないが、「コンピューターに詳しいおじさん」には、プログラミングを楽しく教える技術がある。ロボコン開催に向けてPFU社員の有志たちが、子どもたちに「こんなことができるよ」を伝え、「楽しい」を引き出した。

ロボットプログラミングを初めて学んだ子どもたちが、自律走行型ロボットを走らせ、ミッションをクリアできるようになるまで、およそ2か月。子どもたちの挑戦と成長の様子をお伝えしたい。

第1回 加能ガニロボットコンテスト

2019年12月26日、石川県金沢市の近江町交流プラザで開催された「第1回 加能ガニロボットコンテスト」。小学4年生から6年生までの16組21名が参加し、大会当日は観覧の保護者を含む多くの人で盛り上がりを見せた。

このコンテストは、石川県の特産品である加能ガニを模した自律走行型ロボットをコースに走らせ、クリアしたミッションで得点を競うというもの。ルールや運営方法については、福井県で2017年から開催されている「越前がにロボコン」に倣い、石川県の大会では、「加能ガニのロボットで、金を探しに金沢から月へ」をコンセプトとした。

ストーリー仕立てのコースは、スタート地点に金沢駅の鼓門(つづみもん)、緩やかにカーブする「かぐやロード」とその先には「月面エリア」が描かれ、月面エリアには金と銀のボールが置いてある。

カニロボットは、卵(ボール)を載せて出発する。このあとの主なポイントは3つあり、まずはコース地面の白色と黒色を正しく判別し、確実に月面エリアまで走らせる(ライントレース)。次は、月面エリアで卵を落とし、金と銀のボールを回収する。その後、再び「かぐやロード」を通ってスタート地点まで戻ればゴールとなる。

目指せ!加能ガニロボコン出場!!~初めてのプログラミング~

大会に向けて、まずはプログラミング教室が実施された。

子ども向けのプログラミング教材には様々なものがあるが、今回は「IchigoJam®(イチゴジャム)」と、「教育版レゴ® マインドストーム® EV3」(以降、LEGO)を使用。久保田さん、楯岡さんほかPFU社員の有志たち8名が、子どもたちの指導にあたった。

しかしプログラミング教室といっても、IchigoJamは2時間半、LEGOは3時間の教室が1回である。

金沢市の小学校では、一部のモデル校でプログラミング教育を先行して行ってはいるが、参加したほとんどの子どもたちにとってプログラミングは初めてだったという。初めてプログラミングに触れたという子どもたちが、わずか2か月後にロボコン出場とは、にわかには想像しにくいが本当なのだろうか。

IchigoJamでのロボットプログラミングを子どもたちに教えた久保田さんに聞いた。

――IchigoJamでのロボットプログラミング経験がある子どもはどのくらいいたのでしょう?
久保田ほぼ全員が、初めて触ったに近いレベルですね。IchigoJamのプログラミング教室は、2日間で約60人の子が参加してくれたんですが、経験者はほんの数人。その数人も、たとえばPFUの「ものづくりラボ」とか、何かのイベントでたまたまIchigoJamを触ったことがあるという程度で、どの子もこんなふうにロボットを動かした経験はまったくないので、そういう意味ではほとんど全員が初心者でした。

――その時点で初心者だった子たちが、2か月でロボコンに出場するまでになるんですか?
久保田なります。できちゃうんですよ、驚きですよ。
私たちはかほく市の小学校に出向き、90分(45分間×2コマ)の総合の時間を担当していますが、この授業で、キーボードから命令を入力するところから、IchigoJamを使ってLEDを光らせたり、センサーから値を読んだりする体験をしてもらっています。自分で入力した命令どおりにカシャカシャ動き出すのですから、楽しくないハズがないですよね。

――1回のプログラミング教室で、カシャカシャ動き出すところまで?
久保田やります。テキストに例題のプログラムを載せていて、この数行のプログラムを打ち込むともう走り出すんです。

――すごいですね、まるで魔法使いになったかのような…。
久保田そのとおりなんですよ!プログラムの値を変えるだけで動きが変わるんです。
前に進んだり、右や左に曲がったり。この命令の値を17にすると左回りするようになるよ、とか33にすると前に進むんだよ、とか、例題の図と、プログラムの内容を説明するだけで、子どもが自分でちょっとずつ改造して遊ぶようになります。

――やっぱり実際にモノを見ながら体験できると、理解のスピードや意欲も違ってきますね。
久保田確かに理解が早いですね。値を変えるとダイレクトに動きが変わるのが目に見えるので、「じゃあここの値をもっと増やしたらもっと前行くんだね?」とか、子どもたちの直感はすごいですよ。こういうのを見て「難しそう」って思うのは大人だけです。本当に、子どもが新しいことを吸収する力にはいつも驚かされます。

金沢から月へ~ロボットプログラミングの実践~

プログラミング教室で基本的な動作を学んだ子どもたちは、コンテストのミッションを達成できるように自分でロボットを作り込まなければならない。

自分のロボットが「どのようにライントレースするか」、「どうやって金と銀のボールを回収するか」、そして「どのように帰ってくるか」、これらをコンテスト当日までに自分で考え、思い通りに動かすためにプログラミングするのだ。

分からないことを質問できるよう、大会までに「フォローアップ教室」が4回実施され、ここでも久保田さん、楯岡さんがメンターとして引き続きサポートした。

子どもたちの集中力がすごい!!~フォローアップ教室~

夕方4時。テーブルにミニモニターを用意して子どもたちを待つ久保田さん。学校帰りの子どもたちがぱらぱらと集まってくる。

空いている席に座り、自分のロボとキーボードを接続する。モニターとロボを見ながら考え込んでいる子、キーボードを叩き、コードを直している子。小学4年生から6年生というと、さぞ騒がしいことだろうと予想していたが、おしゃべりに興じる子は誰もいない。コンテストはもうすぐ。とにかく時間がない。

本番同様に用意されたコースで、試しに走らせてみる。パワフルに動き始めるのだが、コース面の色―白黒―の判断がうまくいかないようだ。どうしてもコースを外れてしまう。コースから飛び出した先で進むのをやめ、なぜかその場で回り続けるロボット。

席に戻り、プログラムを考え直す。コードを書き換えては、また走らせて動きを試す。再び直す、また試す…と、ひたすら試行錯誤を繰り返している。こんなにもひとつのことを飽きずに、投げ出さずにやり続けられる小学生の集中力には驚きだ。
どうしても分からないところを、久保田さん、楯岡さんに相談する。二人の先生に子どもたちからの質問が途切れることなく続く。ひとりひとりの困りごとを聞き、プログラムとロボットの動きを確認していく。うまくいかない原因は分かっていても「答え」を教えることはしないのだそうだ。考えて、やってみて、答えを探し出すのは子ども自身。じれったくも思えるが、これが、うまくいったときの喜びにつながるのだ。だから、時間がかかっても、相談に乗り、ヒントを出すだけ。予定の時間を超えてしまっても質問は続く。先生も子どもたちも、真剣そのものだ。

IchigoJam担当の久保田さん

LEGO担当の楯岡さん

――子どもたちの集中力に驚きました。みんな本当に真剣ですね。
楯岡どの子も、一生懸命に自分で考えていろいろやっています。僕らは最低限のフォローしかしてなくて、「ここから先は、自分で考えてみて」って言ってたので、そこは「すごいな」と思っています。

――どの子も自分で考えて工夫できるというのがすごいです。どのように指導されてきたのでしょうか?
楯岡基本的な動かし方だけは教えています。動かす、前進するというだけでも、もともと知らなかったことなので、まずそこから。次にセンサーを使って白黒を判断するところ。そしてサーボモーターを使って卵を落とす、というように。そこから、学んだことを子どもたちなりに咀嚼(そしゃく)して、「あ、ここはこうやったら動くんだ」というのを理解してくれて、それらをうまく組み合わせて試行錯誤していると思います。

――ひとりひとりロボットの動きが違うんですね。
楯岡月面エリアっていっても広いから、ボールを回収するにも、いろんな取り方があって。やっぱり子どもたちってひとりひとり全然考え方が違うんですよね。白いエリアを全部周って取りに行く子もいれば、行って戻ってくるだけ、という子もいます。そこはもう、子どもが自分で考えた作戦にもとづいて、今まで習ってきたことを組み合わせて、どうやればいいかを自分なりに考えてやっていたと思います。

歓声と涙の決戦~いよいよ大会当日~

大会当日。子どもたちが保護者とともに集まってきた。
最後のフォローアップから1週間しかたっていない。実のところ、完走できた場面をこれまで一度も見かけていないのだ。大丈夫だろうか…。1台も完走できないのでは…。

しかし、まったくの杞憂だった。
予想は完全に裏切られ、子どもたちの底力に魅せられてしまった。フォローアップでは目にすることのなかったいくつもの「完走」の場面に会場が沸く。小学生ロボコン、こんなにも盛り上がるとは…。

コースに描かれた鼓門を出発し、黒地の「かぐやロード」をひた走る。徐々に中心からずれていくロボットが、両端の白色ラインを検知するや進路を修正し、着実に黒色ラインを走り抜ける。無事に「月面エリア」に到着すると、今度は金と銀のボールを集めに歩き回る。この月面エリアで、自分のアイデアで設計した動作を終えると、向きを変え、復路のライントレースを始める。安定の走りで無事に戻ってきた。完走だ!すごい!本当にすごい!

その一方で、やはり切ない場面も。
ロボコンでは会場の明るさや床の硬さがロボットの動きの正確さや安定性に影響するため、調整が難しい。練習のときは安定して動いていたものが、会場のコンディションによってはまったく想定外の動きになってしまう。自分のロボットが思うように走らず、負けて思わず涙ぐむ場面も。しかし、その悔しい経験こそが、次の挑戦につながる原動力にもなるはず…。
参加した子どもたち、それぞれの挑戦が、ひとまず幕を下ろした。

「みんな、本当によくやった!」

このコンテストをきっかけに初めてプログラミングを学んだ子どもたちのロボットが、何台も見事に完走を果たした。子どもたちをずっとサポートしてきたPFUの二人は、愛(まな)弟子たちの成長と頑張りに、感激もひとしおだ。

「もう泣いちゃいそうです。どの子も本当によくやった!って言いたい。」と久保田さん。

コンテストには勝敗がつきもの。喜びの歓声をあげる子もいれば、負けて悔し涙をこぼす子もいる。

だが久保田さんは、「結果は二の次」と言い切る。

「大会に出て、とにかく楽しかったって言ってもらえればいい。完走できた子も、できなかった子も、「自分が作ったロボットがここまで動いて嬉しい」とか、あるいは「もう少し頑張れば…悔しい」とか、そういう気持ちを持って帰ってもらえれば、大成功だと思っています」

どの子にも―たとえ完走できなかったとしても―プログラミングの楽しさは十分に伝わっていることが分かる。参加した感想を聞かせてくれた全員の子たちから「楽しかった、来年もやる!」との声を聞けたのだから。楯岡さんも「今回は4、5年生が中心だったので、来年また頑張ってくれると思います。」と微笑む。

「楽しい」の先を目指して

PFUの“先生たち”が、ロボコンを通して子どもたちに伝えたかったのは、この世界を大きく変えてきた「テクノロジー」が、なんだかよく分からない不思議な魔法なんかではないのだということ。ひとつひとつに仕組みがあり、興味と好奇心を持って、たくさんの失敗を繰り返して、それでもあきらめずに挑戦し続けることが、新しいテクノロジーを産み出し、これからの未来を生きていく力になるのだ、ということ。

デジタル情報時代を担う未来の人材を育成するには、そのために必要な深い知識を持つ大人が、子どもの「楽しい」を引き出し、支えていく必要がある。“コンピューターに詳しいPFUの先生たち”が、力を尽くして子どもに向き合い続ける理由はここにある。

PFUでは地域の子どもたちを対象としたプログラミング関連のイベントを毎年開催しているが、ほかにも大学の公開講座や、小学校に出向いてクラブ活動や総合の時間を受け持つなど、プログラミングの出張授業の機会は多い。教えた子どもたちは、昨年1年間だけで延べ5,000人とのこと。小学校での授業は「最初は知らないから興味がなさそうだけど、最後には「楽しい!」となった子だらけ」なのだそうだ。

「楽しい」ことは、人が学び、成長する力の源になる。

楽しくなければ、はじまらない。プログラミングの世界を知った子どもたちの興味は、さらに先へと広がっていくにちがいない。

金沢市様からのコメント

本市では、会場となったITビジネスプラザ武蔵をプログラミング教育の拠点と位置づけ、2017年度からキッズプログラミングスクールを始めとして 地元のICT業界からの協力を得て『プログラミング教育の聖地』を目指して取り組んでいます。
今回の『加能ガニロボットコンテスト』においては、石川、福井のICT業界団体に加えて、PFUの協力を得て、子供たちにプログラミングに触れて「楽しい」と感じるだけでなく、自らのプログラミングによって目的を達成する喜びと、そこに至るまでの試行錯誤のなかで、新たな学びを経験してもらいたいとの想いから企画しました。
これからも、子供たちに興味・関心を持ってもらいながら、知識・スキルを高める企画を実現していきたいと思います。

  • ※1IchigoJamはjig.jpの登録商標です。
  • ※2LEGO、レゴ マインドストームは、LEGOグループの登録商標です。