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技術・創造

PFU品質のウラの裏を覗いてみた~高温や低温環境での影響を徹底調査~

2019.12.18

ものづくりをしている会社は、例外なく、「お客様に安心してお使いいただける製品」を提供するために、厳しく、ときには気の遠くなるような品質チェックを行っている。
PFUでは、いったいどんな品質チェックが行われているのだろうか?具体的な取り組みを、実際の品質試験の現場に入り込んで、映像とともに4回に分けて紹介する。

今回はその4回目である。

取扱説明書によると…

2019年10月に出荷が開始されたPFUのスキャナー「fi-800R」。
コンパクトなサイズやユニークな搬送方法に加え、給紙台にセットした原稿の傾きを自動で補正する機能など、なにかと話題のスキャナーである。そのfi-800Rの取扱説明書が、今、ここにある。
取扱説明書には、必ずといっていいほど、装置の性能や仕様を数値で表現した情報が記載されている。「設置諸元」と呼ばれることが多い。fi-800Rの設置諸元のページには、操作環境として、「温度:5℃~35℃」「湿度:20%~80%」という記載がある。これが意味することは、「このスキャナーは、ここに記載された条件で動作をする」ということだ。動作するからには、それ相応の試験がなされているはずだが、いったいどんな試験が行われているのだろうか。

温度試験とは

PFUでは、製品の信頼性を確保するための様々な品質試験を実施している。
中でも、温度や湿度の評価に特化した試験を「温湿度環境試験」と呼んでいる(なお、当記事では現場での通称にならって、以降、「温度試験」と記載する)。
具体的には、お客様の固有な利用環境を想定して、専用の施設の下で、高温、低温、高湿、低湿の状況を実際に作り出し、装置の性能に対する影響を検証するというものである。この専用の施設が「環境試験室」である。

温度試験の現場に潜入

まずは、環境試験室の外観を見ていただこう。ここからは、担当者の盛田さんの案内付きである。

写真だと分かりづらいが、ちょっとした会議室くらいの大きさである。環境試験室では様々な電子機器の温度試験を行っているが、今回の取材ではスキャナーが対象である。
正面中央には、出入りするための堅牢な扉があり、その扉の近くにはPCが1台。室内に置かれたスキャナーとケーブルでつないで、読み取った画像の品質等をチェックするためのものだ。

次に内部の様子だが、実際に中に人が入って作業する必要があるため、たたみ6畳分ほどの広さが確保されている。室内の隅には用紙の束が積まれた棚がある。試験では、この用紙を読み取り原稿に見立てて使用する。

盛田さんの説明では、「用意する用紙はスキャナーの機種によって異なります。今回はfi-800Rということで、29種類の用紙を用意しました」とのこと。温度試験では、スキャナーの機能や特性に応じた用紙の種類がその都度必要になるのだという。

いよいよ温度試験の開始

一通りの説明が終わり、いよいよ実際の様子を見せてもらうことになった。
温度試験には大きく分けて2つある。「低温+低湿度」での低温試験と、「高温+高湿度」の高温試験である。
まずは低温試験から。設定条件は「温度0℃+湿度20%」。条件をクリアしていることは、扉の左側に設置されているコントロールパネルから確認できる。数値を見ただけで身震いしてしまう。

こうした環境下での用紙は、見た目では分からないが、触ると“ぱりぱり”した感じだという。

ここで盛田さんが席をはずし、低温環境で検証するために防寒服姿で戻ってきた。
準備ができたところで、環境試験室の中に入る。

慣れた手つきで棚から用紙を取り出し、スキャナーにセットして搬送状況と画像を確認する。これを用紙の種類分、繰り返す。

規定のチェックリストに沿って粛々と検証を進める。吐く息が白いのがはっきりと確認できる。手もかじかんでいるようだ。一刻も早く外に出たいところだろうが、新機種ゆえにトラブルは起きる。まずはトラブルの深刻さを見極めるのだが、現象を見てすぐに原因が分かることは稀だ。場合によっては、試験を中断して技術部門と状況を共有し、対策を検討することになる。
所定のすべての用紙を検証するのに2時間が経過した。こうして低温試験の一連の作業が終わった。

次は高温試験の番だ。こちらは「温度40℃+湿度80%」という設定条件になる。
なお、環境試験室はゆっくりと時間をかけて温度を上げる必要があることから、試験自体は翌日になる。

さらに過酷な高温試験

翌日、待ち合わせの時間に現場に向かった。高温試験と聞いて、ある程度は予想していたが、最初に目にしたのが下の写真である。

前日とは一変して、軽装になっていた。Tシャツにハーフパンツ。首にはタオルをぶら下げている。40℃の室内で作業するための必須アイテムである。
「本日の高温試験もよろしくお願いします。それでは、さっそく始めます」
作業の流れ自体は低温試験と変わらない。動作が身軽になった点を除いては。
昨日と同様、棚から用紙を取り出し、スキャナーにセットする。ちなみに、下の写真ではスキャナーの周囲をダンボールで覆っているが、これは、室内を循環する風量を抑えるための処置である。

写真を見ただけでは気づかないが、さすがに「温度40℃+湿度80%」の環境では、紙は“しんなり”しているという。あっという間に汗が噴き出る。上腕や前腕といった部位からも汗が出るそうだ。タオルで汗を拭く際は、肝心の原稿に汗が飛び散らないように細心の注意が必要となる。
盛田さんは、「こういった過酷な状況の中でのトラブルはやっかいです。しかし、このトラブルこそが品質向上のための貴重な材料でもあるのです。トラブルの中から装置の問題をあぶり出すのが私たちの仕事です」という。その額には大粒の汗が浮かんでいた。

高温試験を実施した日の夜はビールが格別だそうだ。
こうして、2日間にわたる温度試験の取材を終えた。

PFUのスキャナーを支えるもの

取材を通して、品質試験の過酷さを改めて感じた。
0℃や40℃の空間で長時間の作業を行う過酷さから、「温度試験はまさにヒトのテストでもある」と揶揄(やゆ)する人もいるが、あながち冗談とも受け取れない気がした。試験の担当者は、ただ単に、低温や高温の環境に身を置くだけではなく、そういった環境でスキャナーを実際に使う人と同じ気持ちになって、日々試験に臨んでいるのである。そこには、検証する人の想いが現れるのではないだろうか。

一連の温度試験の取材を終えて、改めて盛田さんに話を伺った。

「温度試験で一番注意していることは何ですか?」
「そうですね、高温試験のときは着替えを忘れないことです(笑)」

汗まみれのTシャツは、世界No.1()のスキャナーを、確かな品質でもって強く支えているのである。

() ドキュメントスキャナーを対象とする。日本・北米はKEYPOINT INTELLIGENCE社 (InfoTrends)により集計(2017年実績)。ドキュメントスキャナー集計よりMobile/Microを除く6セグメントの合計マーケットシェア(主に8ppm以上のドキュメントスキャナー全体)。欧州はInfoSource社(2017年実績)の集計に基づき、西欧地区(トルコとギリシャを含む)におけるシェア。

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