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技術・創造

「現場ファースト」を貪欲に実践した先に見えてきたもの~開発者が語る、fi-800Rの誕生に隠されたヒミツ~

2019年10月15日。すがすがしい秋風が吹き渡るこの日、ある一台のイメージスキャナーが出荷を迎えた。
PFUが自信を持って世に送り出した「fi-800R(エフアイ800アール)」という機種である。
“窓口業務に最適”、“クラス最小サイズ(注1)”、“パスポートをそのままスキャン”といった華やかなキャッチフレーズが躍るこのスキャナーの出荷を、万感の想いで迎えた技術者たちがいる。fi-800Rのプロジェクトに関わったメンバーだ。このプロジェクトでは、「現場ファースト」のスローガンのもと、営業部門、企画部門、技術部門が一体となり、まさに原点に立ち返った取り組みが地道に実践された。その原点が意味するものとは…。
今回は、カタログや取扱説明書からは決して知ることのできないfi-800Rの開発秘話を、実際に企画から開発に携わった技術者の声とともにお届けする。

付加価値が付加価値ではなくなるとき

「ユーザーの潜在ニーズを掘り起こし、技術で解決する。そして付加価値をキチンと伝える」
非常にシンプルだが、ここにPFUスキャナーの原点がある。スキャナーの「給紙」「搬送」「画像処理」といったコアテクノロジーが、他社を圧倒する差別化要因として存在してきた背景には、常に「現場重視」の考え方があった。それがアドバンテージとなって、世界シェアNo.1(注2)という称号も得てきた。

しかし、これまでの差別化要因が差別化要因でなくなるときは必ずやって来る。競合他社の台頭である。トップの座を目指して「追いつけ、追い越せ」と躍起になるのはどの業界も同じだ。これまで付加価値とされてきたテクノロジーは徹底的に研究され、同等の性能や機能を有した製品が比較的廉価で提供され始めることになる。その時点で、付加価値も付加価値ではなくなるのだ。競合他社の攻勢はこれにとどまらず、PFUがこれまで他社を凌駕してきた領域 -スキャナーの利用が多い窓口業務という領域- にも及んできた。この領域を攻略することはシェアに大きく影響することを意味する。そのことを考えれば、攻勢は当然の成り行きといえる。

たどり着いた答えは「現場ファースト」

技術では負けていないのにどこに問題があるのか、かつての取り組みと何が違うのか。

侃々諤々(かんかんがくがく)の議論が繰り返された。そして、彼らはある1つの答えにたどり着くことになる。「現場ファースト」だ。
製品が利用されている現場に足を運び、技術者の視点から、ユーザー自身が気づいてもいない要求を掘り起こし、付加価値として見いだす。それを営業部門と一緒になってしっかり伝える、ということである。
かつては、自社製品の優位性をアピールするために、競合機を並べた比較ビデオを自作し、自らユーザー先に出向いて営業部門と一緒になって丁寧に説明して回った時期もあった。ビデオのクオリティは必ずしも高いレベルではなかったが、付加価値を伝えるために、がむしゃらに取り組んできた過去がある。そうした貪欲さや泥臭さが失われていたことに気づいたのだ。世界シェアNo.1に胡坐をかいていたということでは決してないが、知らぬ間に慢心があったのかもしれない。
以前は当たり前のようにやってきたこのシンプルなスタイルを、今一度、実践しようというのだ。まさに原点回帰である。

現場を見て生まれたコンセプト

かつてと同じ熱い志を持って、改めて、一体となって取り組もうという想いが一致した。

原点回帰の根幹をなしているのは「現場ファースト」である。その現場ファーストを実践すべく、まずは現場を見てこようということになった。窓口業務における動線、お客様とのやりとり、対応スペースといった点を、業種を問わず、見て回った。そこで感じたことは、窓口のスペースが一様に狭く、限られたスペースの中で工夫を凝らしながら、お客様から提示された書類を処理しているという点である。

窓口業務における最適なスキャナーとはどうあるべきか。
窓口業務の特性を勘案したとき、スキャナーの設置性(実使用面積)という点にこだわることには必ずやソリューションがあり、新しい市場開拓につながるはずだ。
コンセプトのイメージが湧いた瞬間である。

POCで「いける!」と実感し、POBで確信へ

コンセプトが固まれば、次は試作機を作ってユーザーに評価してもらう番になる。
設置性(実使用面積)を重視した今回のコンセプトは、はたしてユーザーに共感を持って受け入れられるのだろうか。コンセプトの仮説検証も含め、使用感を体験してもらうことになった。いわゆる「POC:Proof of Concept」である。試作機は板金レベルではあったものの、コンセプトの有用性を的確に評価してもらうために、彼らが付加価値と考え、アピールしたかった機能はしっかりと実装していた。
そして、ここでも「現場ファースト」の精神が貫かれた。少しでも多くの現場の声を聞くために、海外拠点の協力を得て、ヨーロッパ、中国、アメリカなど7か国のユーザー先でデモをすることになった。
結果は非常に好評であった。すぐにでも欲しいという声が多くのユーザーから挙がった。驚いたことに、当初、現行スキャナーの後継機を望んでいた海外拠点(販社)の担当者でさえも、このコンセプトに強く賛同し、当機の製品化の優先を期待し始めたのである。通常、POCの時点で商談につながることは稀だが、各国を回るごとに、商談が一気に加速した。これまでに経験したことのない現場の反響を目の当たりにした彼らは「コレはいける」と実感した。そして開発に Go がかかった。

次のフェーズは、完成品に近いレベルにすることで、製品としての確度をより高めることが狙いとなる。いわゆる「POB:Proof of Business」である。POBでは、「付加価値をキチンと伝える」という、売るための準備を先行して進めた。販促媒体も、自作していた当時とは比べ物にならないほどのクオリティと表現力で、より効果的にアピールすることができるようになった。付加価値をユーザーに伝えるということを地道に繰り返した。ときには競合他社の人を前にしてデモすることもあった。が、コンセプトと機能に関してはゆるぎない自信があったので動じることはなかった。そして、ここでも多くのユーザーから好感を持って受け入れられた。POCでの実感は、このPOBで確信に変わっていったのである。

fi-800Rで見えたもの、fi-800Rの先にあるもの

企画の構想から3年を経て、多くの関係者の想いと期待が詰まったfi-800Rが遂に完成した。
若き開発リーダーの林さんに、今回の開発で苦労した点を聞いた。
「新しい機能を実現する過程で最も苦労しました。コンパクトなサイズをどう実現するか、いかにコストを抑えてユーザーに寄り添った機能を実装するかといったことを1つ1つ見直していきました。悩んで、悩んで、悩み抜いた先にほんのわずかなヒントが見えてくるといったことの繰り返しでした」と振り返る。つまり、新しい機能の誕生は、TVドラマのように、ある日突然、妙案がひらめくようなことはなく、技術の地道な積み重ねの結果でしかないのである。また、次のようにも話してくれた。
「今回の開発では関連部門と一体となった取り組みができました。また、自分の目で現場を見ることでコンセプトに対して確信を持つこともできました。その意味で付加価値は常に現場にあります。これからも、ユーザーが気づかない課題を『技術者の目』で掘り起こし、解決に向けた提案をしていきます。技術者が現場に足を運ぶ意味がそこにあると思っています」

また、開発責任者であるイメージプロダクト事業部 第二技術部の本川部長は次のように話す。
「fi-800Rは、窓口に特化したサイズ、手の動線を最小化した使い勝手、限界まで抑えたコストといった3つのバランスを最適化する上で、困難を極めましたが、今、ようやくユーザーに満足してもらえるスキャナーを提供することができました」さらに、続ける。
「fi-800Rは我々のゴールではありません。こうしている間にも、ユーザーの新たなニーズが生まれています。それに対して、現場を見て付加価値に気づいて技術で解決し、その付加価値をきちんと伝えていくことを愚直に繰り返すことが我々の使命だと思っています。それを実践することで、結果として、売り上げなり、シェアが数値として付いてくればうれしいですね」

PFUは、世界シェアNo.1の業務用イメージスキャナー「fiシリーズ」を開発しているメーカーである。その世界シェアNo.1を支えているものは、高度なスキルを有した技術者と、現場のユーザーの気持ちにひたむきに向き合う姿勢であることを改めて思い知らされた取材であった。

今回紹介したfi-800Rには、かつてないユニークな機能が満載です。詳細は、PFUの製品ページ(注3)をご覧いただき、そのすごさを是非、実感してください。

(注1) A4縦送りで毎分30枚/60面以上の読み取りが可能なA4対応ADFタイプのイメージスキャナーの設置面積(スキャナー全閉時の幅と奥行きのカタログ値の積)において、PFU調べ(2019年9月5日現在)。
(注2)ドキュメントスキャナーを対象とする。日本・北米はKEYPOINT INTELLIGENCE社 (InfoTrends)により集計(2017年実績)。ドキュメントスキャナー集計よりMobile/Microを除く6セグメントの合計マーケットシェア(主に8ppm以上のドキュメントスキャナー全体)。欧州はInfoSource社(2017年実績)の集計に基づき、西欧地区(トルコとギリシャを含む)におけるシェア。
(注3) https://www.fujitsu.com/jp/products/computing/peripheral/scanners/fi/

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