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技術・創造

PFU品質のウラの裏を覗いてみた~ほこりにまみれた環境での利用を想定した検証~

ものづくりをしている会社は、例外なく、「お客様に安心してお使いいただける製品」を提供するために、厳しく、ときには気の遠くなるような品質チェックを行っている。
PFUでは、いったいどんな品質チェックが行われているのだろうか?具体的な取り組みを、実際の品質試験の現場に入り込んで、映像とともに4回に分けて紹介する。

今回はその3回目である。

一風変わった品質試験

スキャナーで原稿を読み取った際、画像に縦スジが入っているのを経験したことはないだろうか。
原因はいくつか考えられるが、多くの場合、該当の箇所をクリーニングするか、または原稿に付着した異物を取り除くなど、ユーザー自身での対処が可能である。しかし、ほこりがスキャナーの核ともいえる光学系ユニットの内部に入り込むと、少しばかりやっかいだ。日常のお手入れレベルでは済まなくなり、サポートセンターに問い合わせたり、場合によっては修理が必要になる。こうした事態を少しでも減らすために、PFUではちょっと変わった品質試験を実施している。あまり聞き慣れない名称だが「塵埃(じんあい)試験」と呼ぶ。

塵埃試験とは

塵埃試験とは、砂や土ぼこりが多い環境でも、製品(この場合はスキャナー)が安定して動作するように、スキャナーの気密性を検証する試験である。具体的には、試験対象のスキャナーに対して、人工的に作った試験用ダスト(砂やほこり)を一定時間、強制的に吹き付け、防塵性を評価するというものだ。
だが、砂や土ぼこりが舞い込むとは考えにくいスキャナーに、なぜこのような試験が必要なのだろうか?

クレームが多発???

PFUでは、2000年頃、アジア諸国に向けて、スキャナーの海外展開を本格化させた。ところが、この頃を境に、あるクレームが多発するようになる。「清掃しても画像の縦スジが解消しない」というものだ。これまで販売が主流であったヨーロッパや北米では、あまり聞かれないクレームであった。
クレームは中国やタイなどからも寄せられたが、特に多かったのがインドからのものである。技術部門の担当者は、さっそく調査のために現地に向かった。そして、ある驚きの事実を知ることになる。

想定を超えるスキャナーの利用環境

世界の道路事情は様々だ。当時、担当者が現地で見た道路は舗装もされておらず、人や車が通るたびに砂や土ぼこりが舞い上がるような状況であった。そして、問題のスキャナーは、まさにその道路に面したオフィスで利用されていた。夏だったこともあり、全開した窓から砂や土ぼこりがオフィスの内部に入り込んでいるのが肉眼でも確認できた。調査するまでもなく、クレームの原因は容易に想像できた。

こうした環境でスキャナーが利用されることは、正直、だれも想定していなかったのである。
詳細な調査結果を携えて日本に戻った担当者は、さっそく、対応の検討に入った。その対応の1つが「塵埃試験」の導入というわけである。

これが塵埃試験だ

それでは、塵埃試験の内容を具体的に見てみることにしよう。
ここからは、担当者の英(はなぶさ)さんの解説とともに紹介する。
塵埃試験では専用の装置を使用する。その名も「塵埃試験機」。サイズは、高さ180センチメートル×幅150センチメートル×奥行140センチメートル。重量は300キログラムを優に超える。業務用の大型冷蔵庫を想像していただければ分かりやすいと思う。事実、ムリをすれば、大人が立った状態でも2人は入れそうな感じだ(決して入りたくはないが…)。

「それではさっそく始めます」という合図とともに、英さんが手にしたのはプラスチック製の計量カップと大きな缶。その中には人工のほこりが入っていて、それをダスト投入口から複数回、注ぎ込む。なんと、その量は、インドで最も土ぼこりがひどい地域の5年分を想定しているという。 それにしても、ゴミとかほこりは排除するものと相場が決まっているのに、ここでは貴重な試験アイテムなのだ。英さんは、愛着を込めて“ほこりの缶詰”と呼んでいるそうだ。

次は試験対象のスキャナーの準備である。今回用意されたのは、まさに開発中の「fi-800R」という機種。
実際の利用環境を想定し、試験の間中、スキャナーを動作させ続ける必要があるため、英さんは、読み取り原稿に少し細工を施した。連続して原稿が読み取れるようにループ状に加工したのだ。

そして、おもむろに、スキャナーを塵埃試験機の中に入れる。これで準備完了。

扉を閉めてスタートボタンを押す。後はひたすら待つことになるわけだが、英さんの許可を得て、恐る恐る、覗き窓から中の様子を確認したところ、大変な状況になっていた。先ほど投入したダストが送風機から吹き付けられ、あっという間にスキャナーにほこりが付着してしまった。このすさまじい状況は、是非、当記事の最後に紹介する動画を見て確認していただきたい。
ここで全員、いったん退出。次に英さんと会うのは4時間後になる。なぜ4時間後かというと、拡散したほこりが沈下してスキャナーに堆積するまでには一定の時間が必要になるためである。

ここからが塵埃試験の本番

4時間後に現れた英さんは、宇宙人(!?)になっていた。全身を防護服で覆い、マスクにゴーグルまで着けた厳重装備だ。試験用のダストが服に付いたり、吸い込んだりしないよう、装置を試験機から出す際には、こうした厳重な防護が必要になるのだという。

「今からスキャナーを取り出します。皆さんもマスクをしてください」
慌ててマスクを着用する。いよいよfi-800Rとの再会である。

見た瞬間、目を疑った。下の写真を見ていただきたい。

変わり果てた姿に声を失う。茶色く見えるのは試験開始前に投入したダストである。そして、ダストが付着した原稿を繰り返し搬送したために、カバーの中にまでダストが入り込んでいる。長時間にわたって大量のダストが吹き付けられるのだから、たまったものではない。量について聞くと、「電子情報技術産業協会(JEITA)が定める、事務所環境における50倍の量に相当します」とのこと。
4時間前と同じものとは想像もできず、スキャナーが“かわいそう”な気がした。
そういった感傷に浸っている間にも、英さんの手は休むことはない。ここから肝心のチェックが始まるのだ。
まずは軽く、表面のほこりを取り除く。そして、清掃でも取り切れないほこりが部品に入り込んでいないかをチェックする。その後、チェック用にあらかじめ用意した原稿を読み込ませて、縦スジの有無や、正常に動作するかを入念に確かめる。目視に加え、耳による異常音の検知など、チェック項目は多岐にわたる。

こうして、一連の塵埃試験は終わった。

お客様に安心を届けるために

今回の取材を終えて最も強く感じたことは、品質試験の現場は過酷であるという点だ。
塵埃試験は自動車部品では一般的だという。自動車という用途を考えれば、その理由もうなずける。しかし、室内での利用が主なスキャナーに対して実施するメーカーは稀だという。
世界シェアNo.1()のタイトルは、世界に視野を向けたこうした地道な取り組みの積み重ねの結果なのかもしれない。

取材に協力してくれた英さんに、改めて話を伺った。

「ほこりが日常的に舞い上がる環境の中でスキャナーを使うケースは、日本では考えにくいですが、PFUのスキャナーは世界で使われています。それが意味することは、使われる国ごとに利用環境も、ほこりの種類も異なるということです。インドでのケースは空想の話ではなく、実際に困っているお客様がいたということです。そうであれば、その解決に向けて塵埃試験を行うのはメーカーとして当然のことです」

それにしても過酷な試験という印象はぬぐえなかったので、驚きの気持ちを込めて「そこまでやるんですか?」と尋ねたところ…。

「毎日、ほこりと戦っていますが、塵埃試験を繰り返すことで品質を担保するとともに、お客様に安心して使っていただける製品を世界に届けるのだという“誇り”を持って試験に臨んでいます」

とユーモアでもって返してくれた。

今回取材した塵埃試験の内容を一連の流れとして動画でまとめさせていただいた。過酷な状況の中にも、ほこりと向き合う、担当者の真摯な姿をご覧いただければ幸いである。

() ドキュメントスキャナーを対象とする。日本・北米はKEYPOINT INTELLIGENCE社 (InfoTrends)により集計(2017年実績)。ドキュメントスキャナー集計よりMobile/Microを除く6セグメントの合計マーケットシェア(主に8ppm以上のドキュメントスキャナー全体)。欧州はInfoSource社(2017年実績)の集計に基づき、西欧地区(トルコとギリシャを含む)におけるシェア。

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