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けん盤配列にも大いなる関心を
Please Pay Your Attention to the Keyboard Layout

東京大学工学部教授
和田 英一 Eiiti Wada授

PFU Technical Review
Vol.3,No.1(Feb.1992)
pp.1 - 15

参考文献

はじめに | 文字集合 |  規格 | ASCIIキーボード |  マイキーボード | 仮名文字 |  おわりに

4.ASCII キーボード

我々の研究室にたくさんあるキーボードは DEC の VT100、Apple の Macintosh、Sun Micro の Sun 1、2、3、4(Sparcstation 1、2)、東芝のDyna bookなどだが、これはいずれも上の規格のどれでもない。つまり英記号の配置が ISO で決めたのと違っている。これを規格の有無にかかわらず ASCII キーボードと呼んだりしている。要は ISO のがロジカルペアリングなのに対してタイプライタペアリングなのだ。タイプライタペアリングとは昔からのオフィスタイプライタのシフト、アンシフトの対応を尊重するものである。ASCII キーボードだらけの研究室にも最近やっと日電の PC98 とか東芝の Sparc LT とか JIS キーボードのものが入ってきたが Sparc LT はキーバインディングを変更し、ASCII キーボードとして使っている。

JIS キーボードと ASCII キーボードは英記号の位置が違うのだが、筆者のように Lisp プログラマにとってはこれは重大関心事である。なにしろ Lisp では両かっこ (左かっこを「カッコ」、右かっこを「コッカ」という)と 引用符を多用するが、それがキーボードによって違う場所にあったのではたまらない。それもカッコ、コッカが8と9の上にあったり(JIS)、9と0の上にあったり(ASCII)というのではフラストレーションのもとである。

ところで最初にのべたように、筆者の近くは ASCII キーボードがほとんどだから、さしたる問題もないみたいだが、実は ASCII キーボード同士にも微妙な差がある。このことについては、NTT 通研の竹内君の記事[15]が詳しい。数多くの例についてはそちらをみていただくことにするが、ここでは筆者が使ってきたキーボードについて特長を挙げてみたい。

図10は DEC の名器といわれた VT100 である。このキータッチの感じはあまりにもすばらしく、現在でも語り種になっている。いまはキー配置だけに注目すると、大体は ASCII キーボードの標準配列になっているが、これで驚くのは (|、\)のキーが Return (復帰)の右に飛び出していることだ。機能鍵の配置も一応合格だが、A の左隣(C00)にある Caps Lock にはよく触ってあわてたことを思い出す。Caps Lock をこの位置にもってきたために同時押下形シフトキーである Control が遠くへ追いやられてしまった。同時押し下げ形シフトキーはなるべく図形文字の近くにあってほしく、その点左右の Shift は問題ない。

Fig.10-Keyboard layout of VT100
図-10 VT100のキーボード
Fig.10-Keyboard layout of VT100

DEC ではその後 VT220 というキーボードを出した。DEC LK シリーズともいうらしいがこのキーボードは使い難かった。なぜかというとコンマとピリオドは上段にもコンマとピリオドを配置し、従って"<"、">"はこれが一組になり Z の左 (B00)にいった。つまり左のシフトが遠くなったのである。また (~、`) が1の左(E00)にいき、ESC が盤面から消えた。Return の右に出ていた(|、\) は一応 Return の内側にきた。

初期の Macintosh のキーボードはファンクションキーが全然ないところは気持ちがよいが、多少の問題も持っていた(図 11)。(図 11、12、13は中央部分は VT100 のと殆んど同じなので省略してある。) Shift が近めにあるのは評価できるが Control (よつ葉のクローバみたいな記号で表す。)がスペースバーの左にあり、ブラインドタッチでは打ちにくい。(~、`) が1の左 (E00)にあるのは VT220 と同じである。ESC はどうするかというと、(~、`)を打つか Control を押しながら(~、`)を打つのである。


Fig.11-Keyboard layout of Macintosh
図-11 Macintoshのキーボード
Fig.11-Keyboard layout of Macintosh

筆者のキーボード遍歴は、この後Sun 3に移る(図 12)。Sun 3のキーボードは一つの完成点であろう。ESC、Tab、Control、Shift などは標準の位置に収まった。だが今度は Left、Right、Alternate という何に使うか分からないキーがふえた。これが本稿書きだしのように Sparcstation にかわったら(図13) またまた違う配置に悩まされることになったのである。

Fig.12-Keyboard layout of Sun 3
図-12 Sun 3のキーボード
Fig.12-Keyboard layout of Sun 3

図を見てもらえば分かるが、Sun 3と較べ、(~、`) と (|、\) の位置が変わった。前者は ("、') の右(C12) に来た。お蔭で Return が遠くなり、始めのうちはコマンドを実行しようとしてはバッククオートを打っていた。

Fig.13-Keyboard layout of Sparcstation
図-13 Sparcstationのキーボード
Fig.13-Keyboard layout of Sparcstation

こうしてみるとASCII キーボードの場合、記号といってもフラフラしているのは (~、`)、(|、\)の二つである。それが左へ行ったり上へ出たり右へ追われたりしているのである。


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