1. 導入事例
2023.3.10

「fiシリーズ」による印影スキャンで迅速な印鑑登録を実現
住民情報システム「Acrocity」と「fiシリーズ」の組み合わせで住民サービスが向上

左は長崎県大村市 市民環境部 市民課の東友子さん(左)と益田莉穂さん。
右は宮崎県都城市 地域振興部 市民課の横井雄子さん(右)と曽山大輔さん。

行政システム九州株式会社のWebアプリケーション型住民情報システム「Acrocity」を導入している自治体では、同ソリューション標準機の業務用スキャナー「fiシリーズ」を活用し、印影スキャンによる迅速で確実な印鑑登録を実現して住民サービスを向上させています。導入自治体である長崎県・大村市役所と宮崎県・都城市役所(取材順)を訪ね、具体的な運用方法についてうかがいました。

大村市 市民環境部 市民課

都城市 地域振興部 市民課

業種:自治体

1. 「Acrocity」は住民の一生に寄り添うサービスを包括的にサポートするシステム

長崎県・大村市役所と宮崎県・都城市役所の印鑑登録業務における「fiシリーズ」活用方法をうかがうのに先立ち、両自治体が基幹システムとして導入している「Acrocity」について、開発メーカーである行政システム九州株式会社 ビジネス推進部 ビジネスサポート課 課長の高山大輔さんに、その特徴や歴史、「fiシリーズ」との関係などをお聞かせいただきます。

行政システム九州株式会社の高山さんの写真

ビジネス推進部 ビジネスサポート課 課長の高山大輔さん。福岡市博多区の本社にて。

「『Acrocity』は、住民票や印鑑証明などの証明書発行、転入や転出の届出、出生・婚姻・死亡などの戸籍関係の届出、固定資産税・個人住民税・軽自動車税など、自治体の住民に関わるすべての業務を包括的にシステム化し、なおかつ各業務が有機的につながるよう構築された『住民情報システム』です。住民の方の一生に照らすと、出生届に始まり、児童手当、選挙、個人住民税などを経て後期高齢者医療、死亡届、火葬許可書へと至る自治体業務は、生涯にわたってライフイベントを支えるサービスであり、それをサポートする『Acrocity』もまた住民の一生に寄り添うシステムといえます」

「当社は1971年の創業時から自治体に特化した業務改善を手がけており、自治体向けのソフトウェアの開発・販売など、コンピューターを活用したサービスを提供しています。住民情報システムでは、これまでに汎用機向けの『ATOMS』、クライアント・サーバー型の『Picassosistema』と、時代に合ったものを開発してきました。Webアプリケーション型の『Acrocity』はその最新版で、培ってきた技術や製品哲学を受け継いだ上で、ガバメントクラウド運用による標準化対応を推進します」

「Acrocity」の全体構成

「Acrocity」の全体構成。中央やや上寄りにある自治体住民の基本データ「行政基本」を核として、全業務を包括的・有機的にサポートします。

「当社の目指すところは『市町村事務の効率化を通した市民サービスの向上』にあり、それは創業時から現在に至るまで変わっていません。事務の効率化にあたっては、お客様である自治体が主体であることはもちろんですが、お客様と二人三脚のような形で協力し合い、システムで解決できることは積極的に解決してきた歴史があります。現在『Acrocity』は九州・沖縄・四国に関東や北海道も含めた108団体の自治体にご導入いただいており、今まさに進行中の標準化など国の方針に添ったシステムの改変や、新規のお客様に導入いただく場合のコンサルティング支援まで、お客様に満足していただける対応を行っています」

「『Acrocity』で『fiシリーズ』を活用する業務がいくつかある中で、印鑑登録はその代表です。住民の方が印鑑を登録する際に印影をスキャンし、そのイメージデータをシステムに登録します。『Acrocity』が稼働している自治体における『fiシリーズ』の導入率は100パーセントです。システムの標準スキャナーとして『fiシリーズ』を選択したのは、性能が高いこと、トラブルが発生しにくく信頼性が高いことに加えて、PFUとは技術的に密接な協力関係を築けるからでもあります。スキャンした印影を回転させる、切り出すといった処理を『Acrocity』上で行うために、PFUの画像処理技術をシステムに取り入れています。『fiシリーズ』は介護保険の認定審査会業務における書類のデータ化にも使われているほか、今後は個人住民税関連業務にも活用していく予定です」

2. 長崎県大村市|小型の「fi-65F」を活用し限られたスペースで印鑑登録業務の効率化を実現

大村市は長崎県の中央部に位置する人口約9万8000人の市です。長崎空港を擁するほか西九州新幹線の沿線でもあり、交通の便がよいことから長崎市や佐世保市のベッドタウンとして発展しています。また大村市は競艇発祥の地としても知られており、「大村競艇場(ボートレース大村)」ではしばしば重要なレースが開催されて全国から競艇ファンが集まります。利便性に加えて豊かな自然環境にも恵まれた大村市には移住してくる人も多く、近年は人口増の傾向にあります。

庁舎内部の階段の写真

庁舎内部。階段に描かれているのは大村市の花「オオムラザクラ」がモチーフのマスコットキャラクター「おむらんちゃん」。

庁舎内部の様子

正面玄関を入って左手すぐのところに市民課の窓口があります。

大村市役所では業務効率化と住民サービス向上を目的に、『Acrocity』のリリース以前から行政システム九州株式会社の住民情報システムを導入しています。平成27年(2015年)には現在の『Acrocity』に全面更改し、同時に導入した「fiシリーズ」のA6フラットベッドスキャナー「fi-65F」を印鑑登録業務に活用しています。その具体的な運用手順について、市民環境部 市民課 窓口グループ 係長の東友子さんと、同じく窓口グループの益田莉穂さんにうかがいます。

印鑑登録業務について話す東さん
fi-65Fの利用について話す益田さん

大村市 市民環境部 市民課 窓口グループ 係長の東友子さん(左)と、同じく窓口グループの益田莉穂さん。

大村市 市民環境部 市民課 窓口グループ 係長の東友子さん(上)と、同じく窓口グループの益田莉穂さん。

「印鑑登録は年間を通して一日10件前後の申請があります。転入が増える3月・4月には引っ越しと同時に印鑑登録も済ませる方が多くいらっしゃるため、急激に増加します。直近では3月に40件の日がありました」(東さん)

「『fi-65F』は窓口の奥のデスクに2台設置しており、それぞれ専用の端末につないでいます。登録の手順としては、まず申請者ご本人様に印鑑登録の申請書を窓口で記入していただきます。その情報と、あらかじめ準備してある印鑑登録証(カード)の番号を職員がシステムに入力して印鑑登録の原票(事務上の元になる伝票)を作成し、A4の普通紙に出力します。印鑑はご本人様にも申請書に捺していただきますが、登録のための印影は職員が印鑑をお預かりし、原票の所定の位置に押印します。その印影の上に透明な保護シールを貼り、『fi-65F』でスキャンします」(益田さん)

窓口奥の印鑑登録専用デスクの様子

窓口の奥にある、印鑑登録専用のデスク。「fi-65F」と端末が2組、設置されています。

印鑑登録の原票サンプル

職員が印鑑を捺し、印影の上から保護シールを貼った状態の原票。申請者の情報と印鑑登録証番号がすでに印字されています。

「 A4の原票を裏返し、角を1か所合わせてスキャナーにセットすると、印影とその周辺だけがスキャンされる設定です。スキャン後は画像が端末に表示されるので、それを見ながら画像処理機能を使って印影だけをさらに切り出し、印影が真っ直ぐになるよう回転させる、目視でちょうどよい濃さにするといった調整を行います」(益田さん)

原票をfi-65Fにセットする様子

原票を裏返して角を合わせて「fi-65F」にセットし、スキャンします。

スキャンした印影を調整する様子

画像回転機能で印影の傾きを修正し、濃度の調整も行います。

「調整を終えたら『反映』のボタンを押すと原票のデータに印影の画像が貼り付けられ、印鑑証明書を出力する際の元データになります。印鑑証明書はコピーした場合に複写だとわかるよう、普通紙ではなく改ざん防止用紙に出力します。印鑑登録をされる方の多くが同時に印鑑証明書も取得されます」(東さん)

「印鑑の登録に際しては、申請を受け付けて押印する職員と、スキャン・登録を行う職員、必ず2名で登録内容を確認することを基本にしています」(東さん)

完成した原票

完成した原票のデータ。これを改ざん防止用紙に出力すると印鑑証明書になります。

紙出力した原票

紙に出力した原票は別途、厳重に保管します。

大村市における運用の特徴は、コンパクトサイズの「fi-65F」をチョイスし、紙の角1か所を合わせてセットすれば印影部分が写るように原票のレイアウトを工夫していることです。「fi-65F」は狭い受付カウンターで本人確認書類などを手早くスキャンできるため、自治体などで多く利用されています。この機種を選ぶことで、窓口やバックヤードのスペースが限られている場合でもスムーズな印鑑登録を実現できます。

デスクに設置したfi-65F

「fi-65F」は狭いスペースにも置けるA6フラットベッドスキャナーです。

印鑑登録証の写真

印鑑登録証にもオオムラザクラがあしらわれています。

なお、印鑑登録1件にかかる時間は、職員2人による確認作業を含めて10分から15分前後です。スキャナーの2台同時稼働も可能なので、繁忙期にも同じペースで登録できます。人口増の大村市にあって、「Acrocity」と「fiシリーズ」の組み合わせは大きな力になっています。

3. 宮崎県都城市|マイナンバーカード交付率日本一の市では9台の「fi-8170」が活躍中

都城市は宮崎県の南西に位置し、人口約15万9000人と県内で宮崎市に次ぐ二番目の規模を誇る主要都市です。都城市ではマイナンバーカードの普及に力を入れており、市役所の窓口だけでなくショッピングモールで申請の受付を行う、「マイナちゃんカー」で各戸を個別に訪問し申請・交付を行うなどの取り組みにより、交付率は市区別で日本一の90.1%(2023年1月末現在)を誇ります。マイナンバーカードは後述するように、印鑑証明など証明書の交付にも関係しています。

都城市役所の本庁舎の写真

都城市役所の本庁舎。

本庁舎エントランスの都城市PRロゴの写真

本庁舎エントランスの都城市PRロゴ。書家「紫舟(ししゅう)」さんの手によるものです。

都城市役所が「Acrocity」を導入したのは平成18年(2006年)の大規模合併時です。以来「fiシリーズ」も印鑑登録業務に2~3世代にわたって活用しており、現在はA4高速スキャナー「fi-8170」を市役所本庁に2台、それぞれ複数ある支所と市民センターに各1台(計9台)を導入しています。ここでは本庁の地域振興部 市民課 副課長の横井雄子さんと、同じく市民課 主事の曽山大輔さんに、印鑑登録業務における「fi-8170」の運用についてうかがいます。

fi-8170の利用について話す横井さん
印鑑登録業務について話す曽山さん

都城市 地域振興部 市民課 副課長の横井雄子さん(左)と、同じく市民課 主事の曽山大輔さん。

都城市 地域振興部 市民課 副課長の横井雄子さん(上)と、同じく市民課 主事の曽山大輔さん。

「印鑑登録の件数は、本庁だけで一日に20件から30件です。3月・4月には住所異動が多くなるため、最大で10件程度、申請が増えます」(曽山さん)

スキャンまでのフローは前掲の大村市と同様です。来庁者が印鑑登録の申請書を記入し、その情報と印鑑登録証の番号を職員がシステムに入力して原票となるA4の紙を出力。そこに職員が登録する印鑑を捺してスキャンします。

シール状の紙に印鑑を捺す様子
原票に印影を貼り付ける様子

都城市ではシール状の紙に印鑑を捺し、透明な保護シールを貼ってから原票に印影を貼り付ける方法をとっています。

「窓口の横に印鑑登録用のデスクを設けており、『fi-8170』と端末を2組、設置しています。準備ができた原票を『fi-8170』でスキャンすると、印影とその周囲だけが画面に表示されるので、印影部分だけを切り出して画像の回転や濃度の調整を行い、システムに登録します。なお受付とシステム登録は必ず別の職員が担当し、最少でも2名で登録内容を確認します」(曽山さん)

印鑑登録の受け付け窓口の様子

正面奥が印鑑登録の受け付け窓口。ピンクのパーテーションの裏が登録作業用のスペースです。

登録作業用のスペースの様子

登録作業用のスペースを内側から見たところ。「fi-8170」と端末が2組、設置されています。

fi-8170で原票をスキャンしているところ

印影を貼り付けたA4の原票を「fi-8170」でスキャンします。毎分70枚(140面)の高速スキャン性能を備えているので、原票1枚のスキャンは瞬時に完了します。

画像処理機能で印影を調節する画面

画像処理機能を使って印影の角度や濃度を調整し、システムに取り込めば原票のデータが完成します。

「2名以上で確認するため利用者の方を15分から20分お待たせすることになります。その点『fi-8170』は原票を素早く正確にスキャンしてくれるので、作業を急ぎたい我々にとってはありがたい存在です。それに、前の世代の機種よりも印影がきれいに写るようになっていると思います」(横井さん)

印影を登録した原票のデータは大村市同様、改ざん防止用紙に出力されて印鑑証明書となります。また印鑑を捺した原票は別途保管します。

ところで、印鑑登録をした利用者が印鑑証明書を取得する際、都城市では庁舎窓口での取得のほかに、マイナンバーカードを利用してコンビニでも取得できる旨を案内しているそうです。

「窓口で取っていただく場合の手数料300円に対して、コンビニで取っていただく場合は150円と、料金が変わってきます。そのためマイナンバーカードをお持ちの方には、登録された翌日のお昼以降にコンビニでも取っていただけることをお知らせしています。コンビニの場合は朝の6時半から夜の11時まで利用できますので、その点でも便利かと思います」(曽山さん)

「Acrocity」と「fiシリーズ」の連携、ならびに高い交付率のマイナンバーカードが、県の中核都市の一つである都城市の住民サービスをいっそう向上させています。

※おむらんちゃんは、大村市の登録商標です。

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