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理想のキーボードを目指して(後編)
  ~多様化するニーズに応えるべく製品ラインナップを強化~

エンジニアやプログラマーに最適のキーボードを

HHKB Lite2 日本語配列

HHKB Lite2 日本語配列
<かな無刻印モデル>


前回は「Happy Hacking Keyboard(以下HHKB)」が世に送り出されるまでの経緯についてお伝えしましたが、その後も様々な形で進化を遂げていくことになります。

まず初代のデビューからちょうど一年後の1997年11月に、Macintoshにも対応した2代目モデルの販売が開始されます。初代はPS/2注1とSUNワークステーションの2機種対応として登場しましたが、実は開発段階から既にMacintoshへの対応が要件として盛り込まれていました。しかしライセンス問題など諸般の事情で初代での対応が見送られたため、2代目でようやく本来の形としてデビューしたわけです。価格も少し引き下げられ、29,800円になりました。

さらに1999年には、7,800円という大幅な低価格化を実現した普及モデル「Lite」が登場します。もともとLiteは米国市場への投入を前提として開発したため、まず7月に米国で先行販売を開始。日本市場へのデビューは、その3ヶ月後の10月となります。

Liteの開発におけるポイントは「いかに品質を損なうことなく低価格化を実現するか」という点でした。HHKBは、他に類を見ない高品質キーボードという評価を獲得しています。コストダウンのために中途半端な製品になってしまったのでは、これまでの苦労が台無しになってしまいます。

そこで「インターフェースをPS/2のみに絞る」など低価格化のための努力は重ねつつ、構造上重要な部分については妥協しないという姿勢で臨みました。たとえばタイピング感覚に大きく影響するシャーシ剛性。市販のキーボードには両端を持ってねじるとカンタンに歪んでしまうような製品が珍しくありませんが、Liteは中央部をビスで支持する構造になっているため、非常に高いシャーシ剛性を備えています。手頃で高品質なLiteの登場によって、HHKBのユーザー数は飛躍的に拡大しました。

2001年にはLiteの発展モデルである「Lite2」が登場しますが、ここでは今までとはまた違った課題に取り組むことになりました。オリジナルのHHKBからLiteまでは、主にUNIXエキスパートを中心に製品作りを行ってきました。前回も述べた通り、UNIXワークステーションのキーボードの使いにくさを改善することが出発点だったからです。

しかし時代は移り変わり、初めて使うネットワーク端末がWindowsパソコンというエンジニアやプログラマも増えています。このため従来モデルのような英語配列だけでは、使いにくいという要望が出てきたのです。

そこでLite2では、独立したカーソルキーを加えると同時に、文字配列のパターンも増やしました。現在では「日本語配列かな無刻印」「日本語配列」「英語配列」の3種類をラインナップ。またパソコン用の標準インターフェースとなったUSB対応モデルも加えています。


品質へのこだわりを維持しつつさらなる進化を目指す

普及モデルを充実させたからと言って、「理想のキーボードを目指す」という姿勢を捨てたわけではありません。2003年には、再び2万円を超えるハイエンドキーボード「Professional」をリリースしました。

key

このモデルでは、円錐バネを押し下げる際に生じる電荷の容量値変化によってスイッチングを行う「静電容量無接点方式注2」を採用。「理想的なキー押下特性が得られるため、長時間の利用でも疲れにくい」「チャタリング注3が起きず、かなりの高速タイピングにも余裕で追随できる」などのメリットを実現しています。

また登場時に大きな話題を呼んだのが、キートップにまったく文字が刻印されていない「無刻印モデル」の存在です。実はこのモデル、開発者のちょっとした経験がきっかけとなって生まれました。娘さんの鍵盤ハーモニカに音階を記した色紙を貼ってあげていたところ、突然あるアイデアがひらめいたのです。

「そもそもピアノなどの楽器の鍵盤に刻印はない。それなら市販のコンピュータ用キーボードにも、無刻印モデルがあってもいいのではないか?」

もともとはProfessional発売開始にあたっての限定モデルとしての企画でしたが、なんと予定数量があっという間に完売。その後も要望が多かったため、カタログモデルとしてラインナップされることになりました。ちなみに現在も、Professionalの販売量の約3割を無刻印モデルが占めています。これは開発スタッフにとっても、まったく予想外のことでした。

今までにない新たなジャンルを開拓したHHKBですが、これからも様々なチャレンジを行って参ります。少々余談になりますが、実は以前に「輪島塗HHKB」というものを製作したことがあります。「キーボードの理想の質感」を追求する上でのスタディモデルとして2台だけ試作したものですが、こうした常識にとらわれない発想が重要だと考えています。

ハンドメイドパームレスト

ハンドメイドパームレスト
(ヌメ革+ウォルナット)
(PFUダイレクト限定商品)


またHHKBについては、PFU以外のメーカーやショップの方が、専用のキーボードルーフ(カバー)やパームレストを独自に製作して下さるといった広がりも生まれました(注意)。これも非常に嬉しいことです。

ニッチトップを目指すPFUの代表的製品に成長したHHKB。今後もその基本コンセプトが変わることはありません。文豪の万年筆のように、いつまでも愛用できるキーボードを生み出し続けていきたいと思います。将来登場する新しいHHKBにも、ぜひご期待ください。


(注意)
HHKBおよびオプション商品は、PFUのショッピングサイト「PFUダイレクト」よりご購入頂けます。


  • (注1)PS/2
    キーボードやマウスを接続するコネクタの規格。ポート(接続口)の形状は6ピンのミニDIN規格でキーボード・マウス共に同型。近年、USBへの置き換えが徐々に進んでいる。
  • (注2)静電容量無接点方式
    電極端子の接触によりスイッチングを行う従来方式に対し、コニックリング(円錐バネ)を押し下げることにより、電極に接することなく電荷の容量値変化を捉えスイッチングを行う方式。長時間での使用でも疲れにくい軽いタッチと抜群の耐久性を実現できる。
  • (注3)チャタリング
    キーボードを高速に、または強く叩いたときなどに、1回の打鍵で文字が連続入力されてしまうような現象。