Caora 導入事例

医療法人 桜花会 醍醐病院様

Caora導入がマイナンバーカード活用の第一歩に
オンライン資格確認によるレセプト返戻の防止を実現

厚生労働省は、2021年10月から「オンライン資格確認等システム」の本格運用を開始した。患者個人のマイナンバーカードと保険資格を紐づけ、医療機関や薬局の窓口でマイナンバーカードを提示することで、その場で保険資格を確認するものだ。醍醐病院はいち早くシステム導入に踏み切り、マイナンバーカードの読み取りと本人認証を行うカードリーダー端末にCaoraを採用した。より質の高い医療サービスを提携するために、今回のシステム導入はどのような意義があるのだろうか。

課題と効果 課題と効果

医療分野の情報化が進む中で浮き彫りになった資格確認の問題

京都市内にある醍醐病院は1957年に開設した単科精神科病院だ。同病院では精神疾患に苦しむ患者が治療に取り組む敷居を下げるため、開かれた環境を築き、様々な医療サービスを提供している。心の病気は、体の病気と同様に早期発見・早期治療が大切であることから、作業療法や訪問看護、クリニックによるデイケアサービスに力を入れている。

地域住民とのつながりも強い。毎年夏まつりを開催し、職員による模擬店や、地元高校のブラスバンド部によるコンサートで交流を深めている。残念ながらコロナ禍の影響で近年は中止となっているが、再開を心待ちにしている住民も多い。

グループ全体の情報システムを取り仕切るのが、山崎氏が管掌する情報システム部門だ。レセプト院内審査システムなど数々のデジタル化に取り組み、医療サービスの高度化と業務効率化に努めてきた。コロナ禍においては、入院患者に面会できない家族のためにオンライン面会のシステムも導入した。

山崎氏が課題と捉えていたのが、資格確認業務だ。「資格については運用で厳重に管理していますが、目視確認のため、どうしても人的ミスが発生してしまいます。正確な資格確認の必要性を感じていました」と山崎氏は語る。資格が誤っていた場合は、レセプト返戻の処理が必要になる。再請求の事務処理が煩雑で、毎月、かなりの時間を取られている。

そこへ厚生労働省からオンライン資格確認等システムの運用開始案内が届いた。「当初は予算が確保できず導入を断念しましたが、補助金の拡充に伴い導入にこぎつけることができました」(山崎氏)。

端末の設定に苦戦したものの大きな混乱なく運用を開始

導入準備においては、資格確認を行う端末の設定に苦労をしたという。カードリーダー自体は簡単に設定できるが、その接続先の端末のセットアップが煩雑なのだ。同院に導入する端末の設定についてはシステムベンダーである富士通Japanに依頼したが、系列のクリニックに導入する端末の設定については予算が確保できず、まずは自身で実施を行うことになった。「当院はいち早く導入したため、その時点では富士通Japan側でもノウハウが蓄積されておらず、設定には苦労したと聞いています。クリニックについては私が設定しましたが、作業に1日以上かかりました」(山崎氏)。

厚生労働省から提供されているマニュアルは、全ての医療機関への導入を想定しているものの、実際の設定環境における端末やカードリーダー、ネットワーク環境の組み合わせによって実際に操作すべき内容が微妙に変化する。そのため山崎氏が設定した際は、富士通Japanが独自に作成したマニュアルも参考にしたという。「マニュアルには他の病院で導入にあたった多数のSEのノウハウが反映されており、有益な情報でした」(山崎氏)。

顔認証付きカードリーダーCaora(マイナンバー対応)

一度導入が済んでしまうと、その後は大きな問題もなくスムーズに進んだ。「職員へのトレーニングも順調でした。運用開始後の使用率も高くなっています」(山崎氏)。

現状、導入にはさまざまな障壁がある。ITの専門知識のない人には設定が困難で、システムベンダーに依頼するには国からの補助金は不十分なのが現状だ。「それでもオンライン資格確認を導入するのは大きな意義があります」と山崎氏は語る。同院では通院する患者の多くが予約診療のため、一括照会であらかじめ資格に変更がないかを確認でき、大きな業務の効率化につながった。また、患者別にいつ資格確認をしたか履歴がわかるため、患者別に資格確認済みかをチェックするツールとしても活用されている。「懸案事項だったレセプト返戻も今後は減少していく手ごたえを感じています」(山崎氏)。

精神疾患の場合、医療機関に通院する際の医療費の一部を公費で負担する制度がある。今後はこうした情報もオンライン資格確認のデータベースに追加される予定となっており、山崎氏はなお一層の業務効率化に期待を寄せている。

認証スピードが速いCaoraにより受付業務の効率化に期待

同院が顔認証付きカードリーダーとして採用したのが、PFUが開発し富士通Japanが販売を行う「Caora」だ。マイナンバーカードを読み取ることで、資格の有無がその場でわかる。マイナンバーではなくICチップに格納される電子証明書を用いて資格確認を行うため、マイナンバーが流出する危険性は極めて低い。政府の提供するオンライン資格確認の仕組み全体がセキュアに設計されており、患者が安心して利用できるように配慮されている。

カードリーダーは他社製もあるが、迷わずCaoraを選択したという。「かねてからイメージスキャナーやキーボードといったPFU製品を愛用しており、機能性、使いやすさに絶大な信頼を置いています。Caoraは端末への接続も簡単で、認証スピードが速いので使いやすいです」と山崎氏は語る。Caoraでは端末との接続に必要なUSBケーブルは1本で済み、端末側のポートが不足する事態も避けられたという。

初診の患者を対象として導入したが、マイナンバーカードの普及率が低く、今のところCaoraの出番が少ない。しかし、今後Caoraの及ぼす効果に期待が高まっている。「今まで受け付けの際は、保険証の提示などで業務が煩雑でした。将来的にCaoraが電子カルテと連携し、マイナンバーカードを読み取った時点で受付業務が完了できれば、業務効率につながるだけでなく患者の負担も減ると考えています」(山崎氏)。

より質の高い医療サービスのためにマイナンバーカード普及の促進を

「オンライン資格確認を、より質の高い医療サービスにつなげるには、マイナンバーカードを普及させなければなりません」と山崎氏は現状の課題を指摘する。マイナンバーカードを健康保険証の代替とするには、一人ひとりが所持する必要があるが、紛失時に悪用されるのではないかという懸念が根強く残っている。「マイナンバーカードはキャッシュカードと同じで、暗証番号がわからなければ悪用されるものではありません。当院でもマイナンバーカードへの不安を取り除くために、患者やその家族への啓蒙に取り組みたいと考えています」(山崎氏)。

東日本大震災では、多くの人が診察券やおくすり手帳をなくし、適切な治療や処方ができなかった。マイナンバーカードを利用できれば、患者の特定検診情報や薬剤情報を取得でき、災害時も患者に適切な医療サービスが提供されることが期待されている。そのためには全国の津々浦々の医療機関でマイナンバーカードを利用できる環境が構築されている必要がある。「患者の健康を守るためには、どこにいても同じように医療サービスを受けられなければなりません。全ての医療機関や薬局が足並みを揃えてオンライン資格確認を導入する必要があります。今後は普及を促進するような施策を期待したいですね」と山崎氏は語る。オンライン資格確認のシステム自体も認知が広がっておらず、普及への課題は山積みだ。しかし同院がさまざまな障壁を乗り越えて導入したことで、後に続く医療機関・薬局の道標となるだろう。

山崎 徹 氏
医療法人 桜花会 醍醐病院 総務部 副部長

個人情報を外部に送信しないセキュアな設計
あらゆる人が使いやすいデザインを実現

Caoraは券面や顔の画像を外部に送信しないセキュアな設計です。また子どもから高齢者まで、さらに車いすを使う患者でも使いやすいユニバーサルデザインを採用しています。マイナンバーカードの処理が本体で完結するため、接続する端末への負荷が軽減され、1台の端末に最大4台までCaoraを接続可能です。

Caoraはオンライン資格確認・医療情報化支援基金による補助金の対象製品となっており、同基金の「医療機関向けポータルサイト」で申し込みの受付を開始しています。

お客様概要

  • 名称

    医療法人 桜花会 醍醐病院

  • 所在地

    京都府京都市伏見区石田大山町72

  • 設立

    1964年4月

  • URL

    https://www.daigo-hp.or.jp/

■ 事業概要

1957年に醍醐病院を創設後、1964年に医療法人 桜花会として医療法人化。醍醐病院の他にもデイケアセンターやクリニックを展開している。醍醐病院は許可病床数301床、250名ほどのスタッフを抱え、京都市内でもデイケアや作業療法が盛んな病院として知られる。

「顔認証付きカードリーダー Caora」のご紹介はこちら

https://www.pfu.ricoh.com/caora/healthcare/